太陽光発電に新しい市場が立ち上がる。システム、商流、お客様が変わっていく。「Social Good(ソーシャルグッド)をつくる。」というビジョンのもと、カーボンニュートラルやレジリエント、省力化などの社会的課題に向けて、さまざまなソリューションを展開しているオムロン ソーシアルソリューションズ様。(以下、OSS)同社の重点分野のひとつであるエネルギー分野では、太陽光発電向けのパワーコンディショナが大きな転換期を迎え、新たな市場が立ち上がろうとしている。カーボンニュートラル(脱炭素社会)への意識の高まりに加え、2012年にFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がスタートして10年以上が経ち、発電効率の低下や設備の不具合、それに伴う売電収入の低下といった課題が顕在化。新機種や新システムへの切り替え、あるいは貸出サービスの需要が高まっている。さらに、ウクライナ情勢などの影響を色濃く受けて、電気料金が高騰。事業コスト削減や環境への取り組みから、太陽光発電でつくった電気を“自家消費”する需要家が現れ、FITという制度に依存しなくても太陽光発電を取り入れたいというニーズが生まれつつある。OSSは、こうした変化をいち早く掴み、販促方法や顧客接点を根本からつくり変えていくために、マーケティング活動を本格始動させた。オムロングループで40年近くにわたり、国内外で新規事業の立ち上げをリードしてきた浅間隆さんはこう語る。「これまでは、オムロンブランド製品に加え、PVパネルメーカ様に向けた相手先ブランド製品として太陽光発電用のパワーコンディショナを販売するかたちがメインでした。今は、市場が大きく変わろうとしていて、FIT制度の終了後を見据えて、企業は“自家消費”、家庭向けは“蓄電池付き”というように市場は既に推移してきていますし今後さらに加速していくと見込まれます」(浅間氏)「そういった意味では、システムも変わり、商流も変わり、お客様も変わり、このままいくと我々がこれまで培ってきたものは残念ながら時代遅れになっていくしかありません。それをどう変化させていくのか? デジタルを活用したマーケティングで、新しいステージへ足を踏み入れていかなくてはならないという想いがありました」(浅間氏)2年の時を経て、改めてワンマーケティングに支援を依頼。「デジタルマーケティングがこれからは必要だな」と漠然と考えていた浅間さん。「ある日同僚との会話の中で家『以前FA(ファクトリー・オートメーション)事業で、プロモーションツールの制作を依頼していた会社が、今はデジタルマーケティングを手掛けているようだ』と聞いたので、さっそくコンタクトをとることにしました」(浅間氏)しかし同じ時期に、社内で全社的にCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)やMA(マーケティング・オートメーション)に向けたシステムを導入するという話が動き出し、この時はかたちには至らなかった。そこから、およそ2年間。ワンマーケティングと浅間さんの接点は途絶えたわけではなく、コンテンツの配信やインサイドセールスによるご案内を通じて、その接点は継続的なものになっていた。「当時インサイドセールスで、今はコンサルタントを担当してくれている佐藤さんをはじめ、みなさんが熱心に接点づくりをしてくださったことで、再びコンタクトを取る機会が訪れました。私自身がワンマーケティングのナーチャリング活動を、身をもって体験したことになります。裏を返せば、こうした活動を我々のお客様に対しても実施していけたらと期待するわけですが(笑)」(浅間氏)浅間さんはなぜ、2年の時を経て、再びワンマーケティングのサイトを訪れたのだろうか?「MAツールを導入し、メルマガやWebセミナーの集客など、最低限のことはシステムに反映されていたのですが、そこからどう一歩踏み出していいのか分からない状況でした。我々としてもMAを使ったデジタルマーケティングというものは、まったく経験がなく、道具はあるけれどもそれをきちんと活かすためには、私たちと伴走いただけるような会社をもう一度考えなければいけない、という想いに至りました」(浅間氏)太陽光発電が転換期を迎え、まだ誰も見たことのない市場が生まれつつあることも、ワンマーケティングに支援を依頼する決め手になったという。「我々は今まさに立ち上がろうとする市場に向き合おうとしています。いかにスピード感を持って自分たちの事業を加速させていくことができるかが重要だと考えています。まだ新しい市場ですから、そこには先生も権威もいません。そんな中、ワンマーケティングなら、我々と一緒に走ってくれるだろう。一般論ではないところで、一緒に悩んでくれたり、一緒に走りながら考えてくれたり、“この市場はこんな状況になっているから、こんなことができるのではないか?”という議論から新しい施策が生まれたり。そんなパートナーとしての期待感と心強さを感じました」(浅間氏)2年前にインサイドセールスとして一度“失注”を経験し、OSS様のお役に立ちたいという想いを持ち続けていたワンマーケティングの佐藤が、自ら手を挙げてコンサルティング担当を志願。2023年6月、マーケティング活動の本格化に向けた支援が始まった。顧客像と購買プロセスを明文化したことで、やるべきことも明確に。浅間さんが手がけるのは、電力コストの削減や環境負荷の低減に取り組む企業にとって新たな選択肢となる「産業向け自家消費システム」。電気料金の高騰や、FITの期間満了を見据えて、これから本格的に立ち上がろうとしている市場だ。その市場には、どんなお客様がいるのか? ワンマーケティングの支援は、そのターゲット像や、見込み客が購買に至るまでのプロセスを明文化して、戦略設計を一から考えるところからスタートした。「私たちのもとには、こんなお客様がいる、あんなニーズもある、というように日々いろいろな情報が入ってきます。それらは断片的なもので、マーケットとして本当に我々が狙うべきところなのか、頭を悩ませる場面も多くありました。ワンマーケティングや営業のメンバーとも議論を交わしながら、購買プロセスをきちんと言葉で明文化したことで、改めて“自分たちはこういうことをやっていくべきなのだ”ということがクリアになり、それを社内で共有できるようになりました」(浅間氏)はじめの3ヵ月ほどは戦略設計をしっかり定める期間にあて、2023年10月からはその戦略にもとづいたMAの運用、Webサイトのリニューアル、コンテンツ制作など、複数の取り組みが併行して動き出していった。新しい市場における商流やお客様の変化に合わせて、Webサイトに対する考え方も大きく変化した。もともと太陽光発電にまつわるお役立ち情報や製品の情報を、会員登録制のサイトを設けてクローズドな環境のもとで発信してきた。営業が特定の事業者のみを介して販売を行っている場合は、OSS-事業者-お客様(ユーザー)という3者間のつながりを深めるうえで、会員制サイトが有効に機能していた。しかし今後、直接Webサイトに情報を探しにくる電力需要家が増えてくると見込まれ、その方々との接点づくりがマーケティング活動においても重要なポイントとなる。そこで会員制サイトを一旦停止するという決断を行い、情報やコンテンツを新規アクセスの見込み客にも見えるかたちに再整備。MAツールと連動したオープンなプラットフォームとしてサイトを生まれ変わらせた。サイトをリニューアルする中で、ここはホワイトペーパーがいる、ナーチャリングのための情報提供もいる、というように必要な「コンテンツ」も見えてきた。2024年7月現在、こうしたコンテンツの具現化・制作も次々と進み、事業を加速させるうえで必要なデジタル基盤と素材が整い始めている。「我々としては、ワンマーケティングに非常にありがたい“道しるべ”をつくっていただいたと感じています。“いつまでにこれを用意して、ここから運用をスタートしましょう。”“このタイミングで、こんなコンテンツを増やしましょう”というように指針をつくってくれて、その流れにうまく乗って、ここまで来ることができたという感覚があります。もともと、ワンマーケティングに支援を依頼する時に決定的だったことが、我々としてはそれまでも必要なものをいろいろつくってきたつもりだったけれど、それを1枚のシートにまとめて、“ここが歪(いびつ)になっています”“これでは上手くいきませんね”と指摘してくれたことです。その1ページがすごく心に残っていて、依頼を決定づけたと言ってもいいと思います。今は、これからのマーケティング活動にとって本当に必要なものが揃いつつあり、次のステップとしてはその効果を見える化して、お客様の増加や満足が数字として見えてくる状態をつくっていきたいと考えています」(浅間氏)展示会で出会った方々は、自分たちの描いたペルソナと違っていた。さらに、2024年2月から「POWER CONTINUE(パワーコンテニュー)」という別の太陽光発電向けソリューションでも、ワンマーケティングの支援がスタートした。「POWER CONTINUE」は、FIT制度の開始から10年以上が経ち、設備の劣化・故障や売電収入の低下が顕在化してきた方々に向けて、性能の良い新機器のパワーコンディショナを定額で貸し出しするソリューション。こちらも今まさに市場のニーズが高まりつつあり、新たな可能性が広がっている。そのマーケティングを担当する金森駿さんは、グループ会社のオムロン フィールドエンジニアリング(OFE)で、エンジニアとして10年間にわたり現場を経験。社外研修で新しい世界にふれたことをきっかけに、「より広い世界で社会の役に立てる仕事にチャレンジしたい」と一念発起し、OSSへの出向を自ら志願した。そこから手探りでエネルギー分野やマーケティングについての勉強を重ねてきた金森さんは、現在「POWER CONTINUE」の新規リード獲得や認知度拡大に向けたチームのリーダーを任されている。POWER CONTINUEは、2021年6月にリリースされたサービスで、販促やマーケティングの手法についても手探りで進めてきた。「今まではDM(ハガキ)を発電事業者の方々に送る販促活動をメインにしていたのですが、それに代わる手法がないかといろいろと検討を重ね、そのひとつとして2024年1月に展示会をひらき、有効かどうかトライアルをしました。その会場で発電所オーナーの方々と直にお話をした時、それまで私たちが思い描いていたペルソナと全然違うことに気づいたんです」(金森氏)もともと想定していたペルソナは、太陽光発電システムに関する知識レベルや意識がそこまで高くはなく、リプレースの必要性をあまり気にしたことがない、「POWER CONTINUE」というサービスについても知らない、という人物像。しかし、実際に展示会で金森さんが出会った方々は、パワーコンディショナについて理解していて、交換の計画などもしっかり立てている人が多かった。「展示会場まで自ら足を運ばれる個人投資家の方たちということもあって、意識レベルが特に高い方々ということもあるかもしれませんが、こうしたターゲット像は自分たちの想像の中にそれまで無かったもので、この体験が“戦略とペルソナを一から再設定した方がいいのではないか”と考える大きなきっかけになりました。それまでも施策を単体でお願いするだけのところは何社かいたのですが、5年後10年後を見据え、何千件というお客様にアプローチをかけて成約に結びつけていかなければならないと考えた時、デジタルマーケティングに取り組むパートナーが必要なのではないかという考えに至りました」(金森氏)そして金森さんは、OSSの社内に先行してデジタルマーケティングに取り組んでいる事例がないか? 知見を有している人がいないか? 調べていく中で、浅間さんとワンマーケティングの活動に出会う。「私は当時、OSSに出向して1年目で、それまでの営業主体の販路拡大や販促活動の進め方を知らなかったことが、かえって良かったと言える部分もあるかもしれません。デジタルマーケティングについても一から自分で調べ、視野を広げることができました」(金森氏)複雑に入り組んだ市場を理解し、気づいていない課題も示していてくれる。「産業向け自家発電システム」と同じように、「POWER CONTINUE」の取り組みも、戦略設計を一から立て直すところからスタートした。「POWER CONTINUEは、機器のリプレース時期が近づいた8~12年経過のお客様がターゲットになります。そこにはEPCといわれる事業者の方もいれば、不動産業の方、個人で投資として保有されている方、親御さんから譲り受けた方もいらっしゃって、ターゲットの幅がとても広く商流も複雑です。ワンマーケティングの佐藤さんたちはそこを理解したうえで、私たちが気づいていない課題もしっかりご提示いただいて、この方たちとならより良いマーケティング活動を進めていけるのではないかという感覚があります」(金森さん)FIT制度が始まってすぐの2012年には、もともと余っていた土地の有効活用として太陽光発電を始めた人が多く、2014年,15年になるとその市場に個人投資家たちも加わってくる。わずか1,2年経過するだけで、ターゲットの属性もそのニーズも複雑に入り組んでくる、という難しさがPOWER CONTINUE事業にはある。「その方たちが、どんなプロセスを経て購買に至るのか? それぞれに対して有効な施策は何か? ペルソナ設計からワンマーケティングさんと議論を重ね、考えられる選択肢をすべて洗い出していきました。話し合うことによって私たちも、“こういうお客さまもいるんじゃないか?”と次々とアイデアが生まれます。明文化せずに頭の中で思っているだけだと、なかなか確固とした軸が定まらないまま物事を進めてしまっている場合も多いかもしれないと実感しました」(金森氏)2024年2月から、3ヵ月ほどにわたってペルソナの設定と戦略設計に時間を取り組んできた金森さん、「時間をかける価値はありました」と振り返る。「最初に戦略の土台がなければ、その後の施策も効果的なものにはならないと思います。ワンマーケティングさんと一緒に土台づくりをしっかりできてよかったと考えています」(金森氏)そして現在は戦略が固まり、自家消費チームと同様に、MAの運用やプラットフォームづくりが進んでいる。社会のためにも、社内のためにも、先駆的なモデルケースをつくり共有していく。「これまでも、何社かの事業者さんに施策ごとに依頼をかけたことがあったのですが、“こういうことを考えているんです”“じゃあ、それでつくります”というように、施策ごとの単発かつ、こちらの指示をかたちにしてもらうだけで終わっていました。ワンマーケティングさんはコンサルティングから運用面・制作面の具体的な取り組みに至るまで、施策をひとつにつなぎ合わせてトータルで支援してくださっていて、とても心強い存在です。こちらもプロが付いてくれていることで自信も出ますし、それによって今後スピードも増していくと考えています」(金森氏)「オムロンは創業から今年91年になりますが、『ソーシャルニーズの創造』という価値観を理念にかかげ、さまざまな社会的課題と向き合ってきました。そのDNAが『オムロン ソーシアルソリューションズ』という社名にも受け継がれ、私たちには先陣を切って社会的課題の解決に取り組む使命があります。さらに、グループ内に目を向けても、デジタルマーケティングの活動についてはまだ実践例が少なく、私たちが先んじて新しいことにチャレンジし、モデルケースとなってグループに成果とノウハウを共有していけたらという想いがあります」(浅間氏)「POWER CONTINUEは、法人のお客様ではなく、個人のオーナー様に直接アプローチするという、これまでに無かった商流を生み出せるという期待感が高まっています。そこでも私たちのグループにとって先駆的な事例を示せる可能性があり、私としてもやり甲斐を感じるポイントになっています」(金森氏)「どちらのソリューションも、サービスとしても組織としてもまだ新しく、これからもワンマーケティングさんと一緒に走り、悩み、策を見い出し、新たな市場の拡大を上回るスピードで、成長を加速させていただきたいと考えています」(浅間氏)グループとしても前例のない取り組みに挑む二人。マーケティング活動を通じた新しい商流と市場の創出が、社内にも社会にも「Good」をもたらすように、オムロン ソーシアルソリューションズとワンマーケティングの挑戦は続いていく。(写真左端)オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社エネルギーソリューション事業本部金森 駿 氏(写真中央左)オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社エネルギーソリューション事業本部浅間 隆 氏(写真中央右)ワンマーケティング株式会社コンサルティング部佐藤 凌太(写真右端)ワンマーケティング株式会社コンサルティング部藤嶋 成美