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アジャイル型インサイドセールス実践法 ~テレアポから脱却し、SaaS時代に適応したプロセスを構築する~ 【第6回】パフォーマンス評価に直結するインサイドセールスのプロセス定義

売上“だけ”でパフォーマンスは評価できるか

インサイドセールスは、セールス全体の流れの中間に位置づくだけに、評価が難しいポジションといえます。
多くの企業では、事業や組織の成長、個人のパフォーマンスを定量的に評価することを意識しているはずです。なぜなら人事評価は、透明性と公平性を担保することが重要だからです。一般的にはKPIやOKRに基づくKey Resultsで表現されていると思います。

そしてセールス部門で外せない指標といえば、売上です。売上は事業を続ける原資になりますし、市場での支持率が直接反映される指標ですから、重要なことは確かです。けれども売上だけで事業やチームの状況、個人の技量すべてを語れるかというと、それは違います。売上という数字だけでは、その内訳はブラックボックスになっているからです。

例えば1000万円の案件1件を受注した場合と、100万円の案件を10件受注した場合では同じ評価になるのでしょうか。売上だけを見ていたら、その中身や価値を見落としてしまう危うさがあります。

そして売上だけを見るやり方は、再現性を得られないという問題もあります。ノウハウが蓄積されないため、ある年はたまたま売上がよかったけれど翌年は大きく下がる、そういったことも起こり得るということです。

今後は“量”の評価に終始しない仕組みが必要

企業の中にはそうしたデメリットも理解したうえで、売上だけを評価する手法をとっているところもあります。売上を報酬や昇進にダイレクトに反映させる制度を設けているようなところです。

こうした企業に共通するのは、成約をゴールに置いている点です。そしてもうひとつの特徴は、最初から社員の離職をある程度想定していることです。入ってくる社員も、一生その会社で働こうとは思っていません。
このような“売上至上主義”が間違っている、と言うつもりはありません。けれどもこれからの時代に合ったやり方かどうかは、検討の余地があると思います。

というのも、この連載で何度か解説しているとおり、ネット時代の購買モデルはサブスクリプション型が台頭しており、むしろ制約が顧客との関係のスタートに変わってきているからです。特にインサイドセールスを採用する企業は、toB商材が多いことでしょう。toCビジネスに比べて顧客の数は限られていますから、良好な関係づくりはより重要なはずです。

そしてもうひとつ、労働市場の変化も見逃せません。少子高齢化と人口減少による労働力不足が近年顕在化しつつあり、若手人材の獲得が難しくなってきています。そして彼らは、押しの強さで勝負する営業を回避し、かつ仕事に社会的意義を求める傾向にあります。売上をたたき出すだけでは、仕事の満足感は得られないのです。

これらのことを踏まえると、“売上だけを評価する”やり方は、今後のセールスの世界ではメインではなくなることでしょう。これは、コール数、アポイントメントの獲得件数、成約数、成約に至った担当件数など、“結果”と“量”だけで評価するやり方を見直すことも意味します。

入口と出口をつなぐ道筋を明確にする

さて、インサイドセールスの人事評価に立ち返ってみたとき、どうしたら客観的に“質”を評価できるか。ポイントは、成約に至るまでのプロセスを丁寧に分解し、それぞれを定義化することです。
あなたの会社では、インサイドセールスがナーチャリングするリード(TQL〈Telephone Qualified Lead〉)が、どのような過程を経て、どうなればフィールドセールスに渡るリード(SAL〈Sales Accepted Lead〉)に変わるのか、明確にしているでしょうか。

例えばリードがどうなれば、“購買意欲が高い”状態といえるのでしょうか。またセールスに渡った時に、リードに対する“有力でクローズドな情報”とは何をさすのでしょう。そしてリードの温度感を、メンバー全員が共通の見解を持ってセールスに望めているでしょうか。

これまで私がコンサルティングをしている限り、今述べたようなことの解像度が揃っている会社はほとんど見たことがありません。多くはマーケティングからリードが入ってくる入口と、リードをフィールドセールスに渡す出口だけ明確で、その間はほぼ属人化しています。そうではなく、入口と出口をつなぐ道筋を見てあげるのです。そうすることでメンバー個人の課題も具体化し、改善に向けて効果的な対策やトレーニングを行えます。ひいては、質の評価と向上を図ることができるのです。

ヒアリング項目は細分化できる

プロセスの分解の仕方ですが、日ごろのアクション、入手している情報を、いったんは最小単位まで徹底的に分解していきましょう。そのうえで、商材や自分たちの組織の特性に合わせ、粒の大きさを調整すればいいのです。

ここではBANTを例に説明しましょう。

BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Timeframe(購入時期)の頭文字を集めたもの。顧客の購入意欲を測る情報として、営業必須のヒアリング項目とされています。けれども“BANT”というのは4つの情報の塊です。それぞれを丁寧に細分化すると、よりリードの様子が分かる情報に変わっていきます。
Budgetといっても、商材購入に充てている金額だけでなく、その企業、あるいは事業部、チーム全体の予算、予算全体における商材の価格の比率などがあり、そこから購入の可能性を探ることができるでしょう。また前年度の予算や実際の収支がどの程度だったのか、予算や決算のスケジュールなどは、購入時期に影響を与える情報です。

このように、ヒアリングを重ねる中で得られるリード情報は、細分化することができます。また細分化した情報が得られるタイミングは、リードの温まり具合によって変化します。つまりTQLの中でもリードがどのくらいの段階か、レイヤー分けすることは可能であり、マネジャーはメンバーが抱えるリードの階層までウォッチして、適切なアプローチを行えているかを評価すべきなのです。

気をつけたい細分化の落とし穴

一方で、気をつけなければいけない点もあります。というのも、分解に固執するとKPIの項目が膨大になりがちです。タイトな数値管理は、組織の機動力を奪います。それにマネジャーは数字を追うことだけで、いっぱいになってしまいます。肝心の育成にまで手が回らなくなってしまうのです。これでは本末転倒でしょう。

それにセールスは生き物ですから、必ずしも想定どおりには展開しません。小さな情報にこだわった結果、商機を逃してしまう、逆にどんなに詳細にヒアリングしても、なかなか進展しないことだって起こり得るのです。相手がある話ですから、“遊び”がないと柔軟な対応ができません。

そしてもうひとつ注意したいのは、チームの力量に応じて個人の裁量を調整することです。つい先日まで熱戦が繰り広げられたラグビーワールドカップでは、日本代表チームが世界の強豪と互角に張り合い大躍進しました。その要因として、“One Team”を掲げ組織力で勝負したことが挙げられます。一方、見事優勝した南アフリカ代表は、個人技でも魅せるプレーが多かった印象を受けます。もし、彼らの国で日本流の戦略をとったとしたらどうなるか。おそらく、トッププレーヤーの持ち味は鳴りを潜め、私たちの常識を超える数々のスーパープレーは生まれなかったでしょう。つまり細かく規定した項目は、プレーヤーのアクションをガイドする一方で、能力発揮を抑制する可能性も併せ持つということです。

大切なのはミクロとマクロの視点を併せ持ち、両側の観点から総合的に評価をすること。ぜひ日ごろのセールス活動を振り返り、“質”を評価する観点を定義化してみてください。

グローバルインサイト合同会社 代表 水嶋 玲以仁
https://globalinsight-japan.com/

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