確度の高い商談を次々生み出す!BtoBマーケティングの仕組みづくりのポイントを解説
顧客の購買行動は日々変化しており、昨今では、顧客は問い合わせを行う前に、既に情報収集や意思決定を終えていることも多いと言われています。
組織の生産性を高めて、売り上げを最大化させるためには、顧客の潜在的なニーズをいち早く察知し、必要な情報を最適なタイミングで届けることが重要です。
そのためには、マーケティングによる効率的な「仕組みづくり」とMAやSFAなどのツールの活用が欠かせません。特に、MAを活用すれば、マーケティング活動や見込客情報、オンライン・オフラインを横断する見込客との接点を管理することが可能です。
本記事では、BtoBマーケティングの仕組みづくりが重要な理由、仕組みづくりのポイント、ツールの活用方法について解説します。
BtoB企業の購買の特徴
当社では、BtoBマーケティングを下記の通り定義しています。
見込み客の購買の検討をあらゆるチャネルでサポートし、
見込み客のニーズを自社のソリューションにフィットさせ、
限られたリソースで売り上げを最大化させること
最終的なゴールは売上であり、売上に結びつけるマーケティング活動が必要であると考えています。
当社がBtoBの購買担当者600人にアンケートを行ったバイイングプロセス調査によると、BtoB企業の購買には、以下3点の特徴があることが分かりました。※1
購入先候補がある程度決まっている状態で、購買活動をしている企業が多いことが分かります。
また、BtoBの購買では、購買先候補に選定されるのは、平均でわずか3.8社という結果でした。このことは、数ある企業の中から、購買先候補の3.8社に選ばれるための活動を行っていく必要があるということです。
※1 出展:企業購買担当者600人アンケート!バイイングプロセス調査レポート
購買先候補に選ばれるためには
購入先候補の3.8社に選ばれなければ、比較検討の土俵にすら立てません。3.8社に選ばれることで、受注を勝ち取る権利を得ることになります。
購買先候補に選ばれるために様々なマーケティング活動を行っていても、ほとんどの企業が認知さえしてもらえず、お客様のフェーズが比較検討に移ってしまうという現象も多くみられます。
それでは、購買先候補に選ばれるにはどうしたら良いでしょうか?
まずは、お客様がどのような手段で情報収集をしているかを考える必要があります。
株式会社ベーシックの調査によると、新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの情報収集が47.6%増、さらにウェビナーでの情報収集は35.4%増、ということが分かりました。※2
コロナ禍になる前は、展示会やセミナーなどオフラインのイベントでの情報収集が多く見られていました。しかし、現在ではオンラインでの情報収集が一般化しており、Webサイトだけではなくオンラインイベントやウェビナー、さらにSNSなど様々な手法が見られます。
企業側の「提供したい方法」ではなく、お客様のニーズに合った手法で情報提供を行うことが重要です。
もちろん、サービスや製品によってはオフラインの情報収集が多いというケースもあるため、自社の現状を把握することから始めると良いでしょう。
※2 出展:新型コロナウイルスの感染拡大によるWebマーケティング活動の変化|株式会社ベーシック(20年6月度調査)
営業中心の売り方
一方、営業現場にも課題を抱えている企業が多く見られます。
BtoB企業では、パレートの法則が当てはまるケースが多くみられます。
パレートの法則とは、売上の8割を全体の2割の企業が担っているという状態にあることを指します。
パレートの法則に該当しているからといって問題があるわけではありませんが、営業中心の売り方をしている場合は以下のような課題が挙げられます。
2割の企業の売上を死守するために、ルーティン受注が多くなる傾向があります。
さらに、売上重視の営業体制だと、プロセスより結果で評価されることが多くなります。その影響で、売上さえあげれば良いという考え方になり、営業プロセスがブラックボックス化する傾向が強まります。
また、4K(カン・コツ・ケイケン・カンケイセイ)に頼るような営業スタイルになり、ムダやムリな営業活動に陥ります。本来営業がやるべき仕事以外のムダな業務が増えたり、過去の経験をあてにしてムリな営業活動を行ったりすると、新規顧客や休眠顧客の開拓が進まず、結果、既存顧客のルーティン受注に頼らざるを得ない状況になります。
このような負のループの状況に陥ってしまうと、企業の成長や売上アップは見込めないでしょう。
BtoBマーケティングの仕組みをつくる3つのポイント
BtoBマーケティングで売れる仕組みをつくるための方法を、以下の3つのポイントに沿ってご紹介します。
①分業体制の構築
②レベニューサイクルモデルの構築
③顧客中心のマーケティング施策の検討
①分業体制の構築
一般的に、営業活動は見込み客を発掘して案件を獲得し、受注活動を行い、顧客のサポートを継続するという流れを繰り返します。
このような状況でよく見られるのが、「ルーティンな受注だけでなんとか事業を継続している」というパターンです。しかし、それでは新規見込み客を発掘することにリソースを割けず、売上の先細りは目に見えているでしょう。
そのため、すべてのステップを営業が担当するのではなく、マーケティング部門と営業部門の分業体制をつくることが重要です。
見込み客の発掘から案件情報の獲得までをマーケティング部門がデジタルを駆使してフォローし、営業部門は受注活動に専念できる体制をつくることが必要となります。このような体制をつくることが、売上を最大化するためのカギといえるでしょう。
部門間の引き渡しの条件を明確にする
上図は分業体制のイメージです。
見込み客の発掘から案件獲得までをマーケティング部門が担い、見込み客数の最大化を目指します。次に、案件数の最大化をインサイドセールス(IS)が担い、受注活動につながる見込み客を営業部門へパスし、受注数の最大化を目指します。そして受注に至ったお客様はカスタマーサポートによってアップセル・クロスセル等で売上の最大化を目指していきます。
各部門間のスタートとゴールを明確にして、バトンをつないでいくような体制となります。
分業する際の注意点として、部門が切り替わるタイミング、つまり見込み客を引き渡すタイミングで、引き渡す条件を明確にする必要があります。
条件が曖昧だと、「マーケティングから引き渡される見込み客は質が悪い」、「インサイドセールスから引き渡される見込み客は受注率が悪い」などと不信感に繋がってしまいます。
そのため、引き渡す際の条件を関係者が集まって協議し、全部門の合意のもと進めましょう。後から振り返りができるよう、定義書のようなドキュメントにまとめておくとより良いでしょう。
顧客中心の顧客管理
見込み客を引き渡す際に、顧客情報を連携する必要があります。顧客情報とは、会社や連絡先、所属部門などの属性情報と、参加したウェビナーやWebサイトの閲覧履歴などの行動情報が含まれます。特に、行動情報はマーケティングから引き渡した後のインサイドセールスや営業活動で重要な役割を果たします。
そのため、活動単位ではなく、一人ひとりの見込み客に活動を統合する管理を行う必要があります。
上図はイメージですが、活動単位の管理だと、1人の見込み客が複数の活動に参加していることが見えにくいですが、顧客単位の管理の場合は個人を軸に活動が紐づきます。
顧客中心の顧客管理のメリットは、一人ひとりの行動が可視化されることで、見込み客ごとに最適化した施策やアクションをとることが可能となります。
Excelなどの手動管理では統合に時間がかかったり、漏れが発生したり管理工数が膨大になってしまうため、MA(マーケティングオートメーション)などシステムを活用することをおすすめします。
②レベニューサイクルモデルの構築
レベニューサイクルモデルとは、見込み客が受注するまでの過程をステージ分けし、どの部門が担当するか役割分担を明確にしたものを指します。
ステージを定義することで、それぞれの見込み客の状況が可視化できます。さらに、どの引き渡しタイミングで活動が停滞しているのかなど、課題が把握しやすくなるメリットもあります。
レベニューサイクルモデルの構築で重要なのが、リサイクルの仕組みをつくることです。
リサイクルとは、営業でアプローチを行ったが失注した見込み客や、インサイドセールス活動を通して「購買ニーズがない」などを理由に営業に引き渡さなかった見込み客を、再度マーケティング対象に戻す仕組みのことを指します。
リサイクルの仕組みをつくると、今後の購買タイミングを把握することにつながります。アプローチをやめて放置してしまうと、行動や状況の変化が見えなくなり、機会損失にもつながります。そのため、再度マーケティング対象に戻して定期的な接点を持ち続け、次の購買タイミングを逃さない仕組みをつくることが重要です。
また、新規リードの獲得には費用も労力もかかります。そのため、貴重な資源である既存リードを活かすために、循環させる仕組みが欠かせません。
パス設計のポイント
レベニューサイクルモデルを設計する際に、「パス」を検討することが重要です。
見込み客獲得からステージを順に遷移し、受注まで一直線につながる「サクセスパス」、リードからの問い合わせや、営業名刺などから、一部のステップを省略する「ファストパス」、さらに営業活動の末、失注などでリサイクルに回した見込み客をマーケティング対象に戻すための「迂回パス」があります。
見込み客の流入・遷移のルートを洗い出し、レベニューサイクルモデルに組み込みましょう。
各ステージへの転換率がKPI
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、「重要業績評価指標」と訳します。目標を達成するためのプロセスの達成状況を観測するための指標です。
マーケティング部門の場合、売上が最終目標(KGI)になっていることが多いため、売上を達成するためのプロセスがKPIとなります。
レベニューサイクルモデルを設計することで、どのステージにどれだけの見込み客が滞留しているのか、どれだけの見込み客が次のステージへ遷移したのかが可視化できます。そうすれば、おのずと各ステージへの転換数がKPIになるのではないでしょうか。その他にも、有望見込み客の件数や、インサイドセールスからのアポ獲得率、営業の商談数などもKPIとして挙げられます。
ここの数字を、マーケティング・営業の両部門で把握し、定期的に進捗を確認して課題点を改善するPDCAを回すことが重要です。
レベニューサイクルモデルを運用する際のよくある課題
レベニューサイクルモデルを運用すると様々な課題が起こりますが、その中でも営業とマーケティングの対立問題をよく耳にします。
例えば、マーケティング活動を通じて有望見込み客を創出し、インサイドセールスにパスしたとします。インサイドセールスは、購買意欲が感じられなかったが目標値があるためとりあえずアポを獲得して営業に引き渡しました。
購買意欲が低い見込み客を引き渡してしまうと、営業からするとマーケティング創出の見込み客はポテンシャルが低いから後回しにしようと、放置されてしまいます。反対に、マーケティングからすれば引き渡した見込み客に対して、全くアプローチしてくれない、と対立関係が生まれてしまいます。
この問題を解決するには、関係者全員が同じ定義を理解する必要があります。
有望見込み客とはどのような行動をしてどのような状態なのか、選別とはどのような基準を必要とするのか、商談をつくるにはどのような条件を満たしている必要があるのか、など、それぞれのステージの定義や遷移条件を明確にしましょう。定義を話し合う際に、お互いが納得するまで話すことが非常に重要です。
③顧客中心のマーケティング施策
顧客中心のマーケティング施策では、見込み客の状況に適した情報を、適切なタイミングで届けることが重要です。
そもそも、お客様の購買活動には波がある上に、BtoBの場合は購買検討期間が長いという特徴があります。
一度情報収集を開始したとしても、プロジェクトの優先順位など様々な要因で停滞や保留するケースも多いです。
上図のように、見込み客の熱量は上がり下がりがあるため、それぞれのタイミングの興味関心に合わせたマーケティング施策やコンテンツを設計し、どの状態の見込み客とも接点を持てるように準備することが重要です。
顧客中心のマーケティング施策を検討するにあたり、いくつかのポイントを紹介します。
ペルソナの検討
見込み客の興味関心に合わせて情報提供するためには、見込み客を知る必要があります。その中でもペルソナの検討は、ターゲットを明確にするために不可欠です。
マーケティングにおけるペルソナとは、自社のサービスや商品を利用している典型的な顧客像のことを指します。業種や所属部門、役職、取り扱っている製品・サービス、課題、などできるだけ細かく設定することがポイントです。
ペルソナについては以下の記事で詳しく解説しているので、是非ご覧ください。
▼ペルソナとは?マーケティング部門であらためて知っておきたい基礎知識
購買プロセスを定義する
次に、顧客の購買プロセスを定義します。
購買プロセスとは、見込み客が製品やサービスに興味をもってから導入に至るまでのプロセスのことを指します。バイヤージャーニーやカスタマージャーニーとも呼ばれます。
前述したレベニューサイクルモデルは自社目線ですが、購買プロセスは顧客目線のプロセスです。そのため、顧客の立場になって検討することが重要です。
例えば、現状維持→課題の気づき→情報収集→内容理解→比較検討→導入決定、といったプロセスが挙げられます。製品やサービスによって異なるため、自社にあったプロセスを検討しましょう。
購買プロセスを定義したら、どのタイミングで営業がアプローチするのが望ましいのか検討が必要です。営業がアプローチするタイミングとは、見込み客の購買意欲が高まったホットな状態であると考えます。
購買プロセスについては、以下の記事で詳しく解説しているので是非ご覧ください。
▼バイヤージャーニーの意味は?基礎知識や活用例・メリットも紹介
購買プロセスに基づいたコンテンツの整理
購買プロセスが確定したら、次はプロセスを遷移させるための条件を定義します。
例えば、「現状維持→課題の気づき」に遷移するために、見込み客がどのような行動を行う必要があるのか考えます。この場合だと、基礎知識に関するコラム記事の閲覧や、資料ダウンロードなどが挙げられます。
それぞれのステージで、何に興味関心をもっているのかなど顧客の状態を明確にすることがポイントです。状態が整理できたら、その状態になるために必要な情報が見えてきます。
遷移条件が定義できたら、それに当てはまるコンテンツをプロットします。ステージごとに適切なコンテンツをプロットすることで、不足しているコンテンツが明確になるというメリットがあります。
さらに、レベニューサイクルモデルと掛け合わせることで、自社目線と顧客目線を同時に確認することができます。闇雲にマーケティング施策を行うのではなく、購買プロセスやペルソナを考慮して施策を行うことが重要です。各施策の役割は、「見込み客のステージを遷移させること」。これがマーケティング施策およびコンテンツの役割となります。
MAとSFAの活用
これまでお話した仕組みを実現するには、MA(マーケティング・オートメーション)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)などのツールの活用が欠かせません。
例えば、見込み客を獲得して有望見込み客を創出するまでのマーケティングの過程をMAが、インサイドセールスが受領してから営業が受注するまでの過程をSFAが担います。
MAの活用方法
MAは、メールアドレスをキーに、見込み客のデータを統合して管理することができます。ひとつひとつのメールアドレスに、Web閲覧や資料ダウンロードなどの行動を紐づけ、顧客中心の顧客管理を実現します。
また、データ抽出もMAの特徴のひとつです。
例えば、3か月以内にウェビナーに参加した人、ペルソナに合致している人、有望見込み客の件数など様々な条件で見込み客を抽出することが可能です。
MAの最も大きな特徴は、自動化機能です。
条件やシナリオを設定することで、マーケティング施策やデータ値変更などの作業を自動で行うことができます。このことで、マーケティング担当者の作業負荷を削減できます。
自動化の例として、ウェビナーに申し込んだが不参加の見込み客に対してアーカイブ配信のメールを送る、指定した条件の行動を行った見込み客のステージの値を自動で書き換える、ウェビナー申込や資料ダウンロードなど見込み客が行動した際にアラートメールを送信するなどが挙げられます。
MAの種類によって、できること・できないことが異なります。
これからMAの導入を検討する場合には、自社がMAを通して実現させたいことを明確にしてから機能を比較することをおすすめします。
SFAの活用方法
SFAは、営業活動の効率化と顧客情報の管理を目的とした営業支援システムのことです。
活動情報と顧客情報をデータで一元管理することで、簡単に社内共有が出来るようになります。
営業活動の情報を顧客データに紐づけることで、担当者以外のメンバーや上長が進捗を確認しやすくなるメリットがあります。ブラックボックス化しやすい営業活動を見える化し、属人化を防ぐことにつながります。
さらに、スケジュール管理や分析用のレポート作成機能、予実管理など、営業活動を効率化するための機能が多くあります。MA同様、ツールによって機能が異なるため、導入前にチェックすると良いでしょう。
MAとSFAを連携するメリット
MAやSFAをそれぞれ独立して利用しているケースもあるかと思いますが、それでは本来の役割を十分に果たしているとは言えません。MAとSFAは連携させることで、真価を発揮します。
営業データとマーケティングデータが見込み客を中心に紐づくことで、見込み客の行動がSFAでも確認できたり、商談情報をMAでも確認できたり、情報共有をスムーズに行うことができます。
その結果、見込み客が今どのような状態にあるのか、把握することが容易となります。
また、商談データも連携することで、マーケティング施策の費用対効果も算出することが可能です。
まとめ
BtoBマーケティングの仕組みづくりのポイントをお伝えしましたが、MAやSFAの導入・運用、レベニューサイクルモデルの設計、コンテンツ制作などマーケティング担当者としてやるべきことは多岐にわたります。
さらに、担当者間でのコミュニケーションや、施策の振り返りや改善、マーケティング施策の立案・運用なども加わるため、マーケティング担当者に求められるスキルは多種多様です。
やるべきことに優先順位をつけて少しずつ体制を整えていきましょう。リソースに限りがあるのであれば、外部の支援会社や協力会社に依頼することも検討しましょう。
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