1994年 中央大学経済学部を卒業、NECにて大手企業に対する法人営業に従事。2000年より、デルにてセールスやマーケティングなどのマネジメントを担当。2007年からはセールスフォース・ドットコムにて、インサイドセールス部門の立ち上げ、セールス部門のマネジメント、セールスイネーブルメントの立ち上げを経験し、2014年からはマルケトの立ち上げに参画。アライアンス、営業、マーケティングなどのマネジメントを歴任。2020年1月より現職。エグゼクティブコーチ、コンサルタントとして外資系企業の日本進出を支援。>第1回 キャリアに迷う営業が、30代でチャンスを拡げる方法営業はマーケターに向いている「営業がマーケターに向いている100の理由」もともとはこんなタイトルを付けようかと考えたほど、営業がマーケターに向いている理由は枚挙にいとまがありません。この回では、それをシンプルに7つのポイントに大別してご案内したいと思います。●お客様を知っている●お客様のお客様まで知っている●自社の製品・サービスを知り、売り方を知っている●売上数字への責任を負っている●ステークホルダーマネジメントに長けている●伝える力がある●お客様との関係づくりを実践しているお客様を知っているマーケターにとって大切なのは、お客様を深く知ることです。事業規模や業種、地域など、いくら条件を絞り込んでセグメントしても、実在する特定のお客様のことを理解できなければ意味がありません。営業は、お客様が自社を選ぶ理由を知っています。お客様が他社を選ぶ理由も知っています。自社に都合のいい推論ではなく、どこまでもお客様を基点に、アカウントベースでものを考えることができます。お客様のお客様まで知っている優秀な営業は、「お客様のお客様」のことも知ろうとします。相手が置かれている状況を理解し、ビジネスの実態に即した提案をしていきます。また、購買・検討のプロセスが長く、さまざまな人が意思決定に絡むBtoBにおいて、どこでお客様がつまづくのかを理解し、お客様の内情に寄りそったフォローをしていきます。お客様の組織体制は?社内のキーマンは?稟議の上がり方は?お客様に誰よりも踏み込んで行動を起こしてきた営業は、リアリティが違います。自社の製品・サービスを知り、売り方を知っている営業は、自社の製品・サービスを知っています。ただスペックや性能を理解しているということではなく、売るという経験を重ねてきたことで、誰よりもお客様の視点に近いところで自社の製品・サービスを見ることができます。お客様がどこに興味を示して、どこに難色を示すのか。費用対効果について納得してもらえるのか。実際の反応を見ながら売り方を模索してきた経験は、マーケティングの現場でも活かすことができます。売上数字への責任を負っている営業は、数字へのコミットメント度合いが違います。マーケターも数字に対して責任を負っていますが、売上や受注の数字に対して日々責任とプレッシャーを負い、本気で向き合ってきた営業は、やはり迫力が違います。営業をやってみないと、数字に対する危機感を本当に持つのは難しいとさえ思います。予算を使うという立場で考えてみても、数字の重みが営業とマーケでは違います。数百万〜数千万の予算を任されるマーケと比べ、一営業にとって100万円の予算は大金です。同じ100万円をより大切に使えるのは、営業の感覚を持った人材ではないでしょうか。ステークホルダーマネジメントに長けている「営業部長とのやり取りが苦手なんです……」「インサイドセールスが思うように動いてくれないんです……」「マーケのことを分かってくれないんです……」私が出会ってきた中で、苦労されているマーケターというのは、ステークホルダーとの関わりにおいて苦戦していることが多いように見られます。社内の調整力(突破力)は、マーケターにとって必須の能力です。営業は、社内外のさまざまな人を巻き込み動かしていく、ということを日頃から本業として行っています。・インサイドセールスとうまくやれる・売る側の気持ちが分かるので、ベンダーさんやパートナーさんともうまくやれる・自分も営業だったので、マーケティングの後工程が分かるチームで動くことに慣れ、ステークホルダーを動かすことに長けた営業経験者は、マーケの推進力を生み出すことができます。伝える力がある営業は、自社の製品・サービスの特徴をお客様にとってのメリットに置き換えて、シンプルな言葉で伝えることができます。お客様への提案資料をまとめて、自らプレゼンも行います。こうした経験は、マーケティングコンテンツのアイデア出しや運営を行ううえでも活かすことができます。また、対話によって伝えるという経験を活かして、自らが登壇者となり、セミナーなどのオフラインコンテンツを立ち上げることもできるかも知れません。お客様との関係づくりを実践しているカスタマーサクセスという言葉が浸透した後、その次に来る概念として「カスタマーマーケティング」という言葉を耳にするようになりました。顧客の獲得までをマーケターの仕事とするのではなく、その後につづく契約更新やアップセル、ほかの顧客の紹介といった領域まで、マーケターのカバー範囲が広がろうとしています。既存顧客のフォローやコミュニティづくりは、もともと営業が実地で行ってきたことです。―――――――――――――――――――このようにマーケターという仕事の中には、営業がその経験と本領を発揮できるチャンスがいくらでもあります。しかし現実には、営業とマーケのあいだに横たわる距離はまだ遠く、多くの人が「自分とは縁のない仕事」として切り離してしまっているように見えます。その距離を飛び越えてもっとしなやかにキャリアを描けるように、次の回では「営業がマーケターになるためのNext Action」をご案内します。ジャパン・クラウド・コンサルティング株式会社 シニアディレクターワンマーケティング株式会社 アドバイザーBCS認定 プロフェッショナル エグゼクティブ ビジネスコーチ小関 貴志