営業と会う前に購入意思決定プロセスの57%は完了している。ガートナー社の調べによると、リードは営業と会う前に、購入意思決定のプロセスの57%を完了しているというデータがあります。こうした中、営業主導ではなくマーケティング主導で、リードに対して効果的な施策を行い、購入の選択肢に自社製品を入れてもらう取り組みが重要になっています。こちらは、当社のあるお客様のカスタマージャーニーです。リード獲得から受注までのプロセスにおいて、上記の通り、見込客との接点は多岐にわたります。また、見込客は、ホットとクールを繰り返しています。受注のタイミングを逃さないためには、営業一人では追いきれない見込客の状況をキャッチし、その時々で適切なアプローチを仕掛けていくことが重要です。そこで、マーケティング部門による組織的な見込客の育成や選別が求められています。80%の企業が、2年以内に競合から製品を購入したことがある。SiriusDecisions社のアンケートによると、自社の営業がアプローチを行ってから、2年以内に競合から製品を導入したことのある企業は、80%にのぼることがわかりました。一度の商談で接点を終わらせるのではなく、リードの状況を見極めて、タイミングよくアプローチできるかが、案件獲得に大きく影響を与えます。ホットとクールの状況を見極めて、見込客との接点を増やすことは、営業主導の活動(狩猟型)では困難です。そのため、集客からリードの選別までをマーケティング担当者がカバーし、ホットな案件を営業に渡す(農耕型)スタイルへの変革が必要になります。狩猟型から「農耕型」スタイルへ●狩猟型イベントやWebなどでの名刺獲得をマーケティング担当者が実施し、その後、ターゲット選別や初回訪問、継続訪問、案件推進を営業が担当する体制です。営業が単独で動くため、アプローチのタイミングが掴めない、案件化につながらないといった問題が起こります。●農耕型リードの集客・管理・育成・選別をマーケティング部門が一貫して行う体制です。リードへ適正なタイミングでアプローチをはかることができ、営業に受注確度の高い案件をつなぐことができます。狩猟型から農耕型スタイルへの変革は、次の4ステップにわけて考えることができます。変革ステップ1:シングルカスタマービュー顧客接点を可視化することで、タイミングを見極める。見込客はWebサイトやセミナーなどマルチチャネルで情報を収集しているため、個々のマーケティング活動ごとにリード情報は紐付いているが、以下の図のようにサイロ化している状態が多いです。つまり、Webサイトのお問い合わせにきたリードと、イベントに来場したリードがもし同一のリードであったとしても、それが分からないでは、ホット状態なのか、クール状態なのかも分かりません。そこで、一人ひとりのリード毎に活動を紐づけて可視化する(これをシングルカスタマービューという)には、マーケティングオートメーション(MA)を活用することが効果的です。マルチチャネルにおけるリードの行動を可視化することができ、時系列で行動を見ていくことで、適切なタイミングでのアプローチを可能にします。Cookieを活用して行動も可視化。スコアリングにてホットリードを自動抽出。特に膨大に増えているオンライン上のデータを補足するには、Cookie(ホームページの訪問情報を一時的に保存する仕組み)を活用しMA内で管理することが可能です。Webサイト内の行動を確認することで、行動のスコアリングが可能。ある一定の点数を超えるリードをリストアップし、インサイドセールスから連絡を入れるなど、最適なタイミングで接点をつくることができます。展示会来場「15点」、サンキューメールのクリック「3点」、ある重要なページを見たら「10点」など、施策ごとにスコアを設定。しきい値を超えたホットリードを自動で抽出することができます。変革ステップ2:アカウントベースドビュー企業情報のユニークなコードの活用により、ターゲット企業の状況を可視化。BtoBの場合、最終的に購入の意思決定は会社となるため、リードだけでなく、会社ごとに情報を把握することも大切です。企業アカウントを管理するにあたり、企業情報データベースを提供しているサービスを活用するケースが増えています。会社名は、NTTや日本電信電話など揺らぎがあるので、MAやSFA、場合によっては基幹システム内にある社名もかなり揺らぎがある場合がほとんどです。ここで発生する問題は、リード数は分かっても、社数が分からなくなったりします。当然ながら社数が揺れていると本来のターゲットの数も分かりませんし、マーケティング活動で獲得したリードがターゲットとしてマッチしているかも分かりません。例えば、イベントの来場者が2500件としても、そのデータだけだと何社存在するのかが分かりません。つまりターゲット企業の含有率も分かりません。そこで、MAにあるリードと企業情報データベースを提供しているサービス会社が発行している企業コードを紐付けて、あとはターゲット企業の企業コードをマージすることで、ターゲット社数とリード数による含有率が可視化可能になります。また、基幹システムとSFA/MAのアカウント情報を企業コードで紐付けて管理することで、MAのリードが、すでにお取り引きのある既存顧客なのか新規顧客かを把握することができます。さらに、基幹DB内の売上データなどの情報資産もあわせて活用することもできます。例えば、「売上上位30社」や「過去5年間売上が皆無」といった、リストを手軽に作成することもできます。ただイベントの来場数の総数を見て一喜一憂するのではなく、目的をもったデータ分析を行うことで、展示会やセミナーなど最適なイベントプランニングを深く検討していくことできます。変革ステップ3:リードライフサイクル永続的かつ継続的なアプローチを実施するために、リードライフサイクルを定義。リードライフサイクルとは、リード獲得から受注に至るまでの過程を管理することです。リードはクールとホットを繰り返しています。リードライフサイクルを構築することにより、購入のタイミングを逃さない体制をつくることがBtoBマーケティングを実践していく上で最も重要です。マーケティング活動、インサイドセールスや営業活動でクローズした際に、リードを再び商談化のプロセスへリサイクル(循環)させる流れをつくります。営業にリードを橋渡しするまで、マーケティングの活動は多岐にわたります。リードライフサイクルを整えることで、インサイドセールスや営業のフェーズで商談を失注した際も、見込客を「リサイクル」することができます。リードを獲得するためには、多額の新規獲得コストがかかりますし、BtoBの場合、ターゲットも限りがあります。「リサイクル」の仕組みによって、有限資産をうまく活用していくことで、活動は雪だるま式に増えていき、継続的な関係構築をはかることが可能となります。「転換率」を意識した分析で、効果的な施策を導き出す。リードライフサイクルという視点においても、企業のターゲティングが重要になります。ターゲット企業に適切なアプローチができているかをはかるために、「ステージ管理」と「転換率の観測」を行います。ワンマーケティングで実践しているのは、もっともセールスに注力しアプローチすべき企業をTier1、その次のターゲットをTier2、Tier3と3階層構造でターゲティングしています。そしてそれらの企業コードを既存のMAやSFAに連携し、ターゲット企業に紐づくリードを抽出しています。企業ターゲティングとリードステージを組み合わせることで、次のステージへターゲットがどれくらい移行したかを可視化でき、停滞しているステージを把握することも可能となります。現状の課題を明確化し、適切な対応をとることができます。変革ステップ4:マーケティングキャンペーンマーケティング活動の成功を定義し、施策の最適化をはかる。農耕型スタイルへの変革ステップの最後がマーケティングキャンペーンの最適化です。冒頭でもお伝えした通りお客様はマルチチャネルで情報を集めていますので、当然ながらマーケティング活動も単発ではなく、つながりのある活動でなくてはなりません。つまり、セミナーや展示会、そしてWebなどのマーケティング活動ごとに、成功の定義や目的を決めれているか?が重要。マーケティング活動における目標として、最終的なゴールでもある売上だけを見るのではなく、施策ごとに成功の定義を決めることが重要です。これらの施策をつなぐことで、最終的な売上というゴールにつながっているかを検討していくこともマーケティング担当者には求められます。例えば、展示会における成功の定義を「リード数の獲得」と決めたとします。展示会の目的達成率が低い場合は、出展を取りやめ他の施策に費用を投下するといった判断ができます。さらに言うとABM発想でターゲット企業のリード獲得という目的に進化していくことも良いでしょう。マーケティング活動はついつい施策することが目的化してしまいがち。「農耕型スタイル」へ変革していくためには、自社視点ではなく、あくまでも顧客視点が重要だということです。自社がどのような会社に、どのような見込み客に、どのようなタイミングでアプローチすべきか、これらを理解するためには、やはりお客様のことを理解しないと分かりません。今一度、いま実施しているマーケティング活動の棚卸をしていくのも良いのではないでしょうか。「農耕型スタイル」への変革ステップまとめ1.シングルカスタマービュー:顧客接点を可視化することでリードへのアプローチ強化2.アカウントベースドビュー:企業ごとの状況を可視化することで、イベント情報の見える化3.リードライフサイクル:永続的かつ効果的な顧客アプローチを実施4.マーケティングキャンペーン:マーケティング活動の最適化最先端のイベントテクノロジーにまつわるプレゼンテーションが数多く行われ、定員を大きく超える参加者が集まったCvent。このような素晴らしいイベントで登壇の機会を設けていただいたJTBグループの皆さまにお礼を申し上げます。垣内がお話した内容が、皆さまのマーケティング施策の、お役に立てれば幸いです。※今回の講演資料を下記にて公開しております。以下からダウンロードしてご覧ください。