「チャンピオンリーダーになろう!」最初にお届けするのはMarketing Insider Group社、CEOのMichael Brenner氏による「2017: The Year of Tough Choices」(2017年:難しい選択の年)と題したセッション。Michael Brenner氏はリーダーシップ、組織文化、マーケティングの分野においてグローバルに活躍するスピーカーであり、著書にベストセラーの“The Content Formula”がある。また、カスタマーセントリック(顧客中心主義)アプローチでの第一人者でもある。Brenner氏は、「今日のマーケティングは企業に収益をもたらすことを期待されており、実際、68%のCEOがマーケティングにそのことを期待している」と語った。氏は、最初に「私たちの仕事は沢山の任務に追われている」と述べた。しかし、「そのほとんどは上手くいかないことが多い。どうして私たち(マーケッター)は上手くいかないとわかっていることをやろうとするのか?皮肉なことに、うまくいかないアイディアの陰には、上層部の指示が絡んでおり、私たちは“上司に言われたことをするのか?それともうまくいくと思う、自分が正しいと思うことをするのか?”を選択する必要がある。」氏によれば、実際に私たち(マーケッター)の方が上層部よりよく現状を知っていることが多いという。チャンピオンリーダーとは?Brenner氏は、与えられた任務と、最高の結果が得られるアイディアの間にあるギャップを埋めるために戦う人を「チャンピオンリーダー」と呼んだ。よく見かける組織では、CEOのアイディアの下にイベントを主催するCMOがいる。その下にイベントのためにプロモーションを準備するマーケティングマネージャーがいる。その下で我々マーケッターは仕事をしている。上層部から下りてきたアイディアを形にするのではなく、率先して、ボトムアップでアイディアを上げ、そのアイディアをチャンピオンにすることを始めよう。言われたことをやれば成功するわけではない。他の人の優れたアイディアがあれば、みんなでその素晴らしいアイディアをチャンピオンにしよう、と語る。別の企業では、「企業のROIをマーケティングで改善しよう」と提案するCEOがいる。その下で、「雑誌広告は費用がかかりすぎる」と言うCMOがいる。その下には「ROIの改善のために雑誌広告をやめよう。」と言うマーケティングマネージャーがいる。そして、その組織の中で、雑誌広告の価値を信じるが、「CEOが雑誌広告をやめると言っている・・」と何もできずに嘆く社員がいる。チャンピオンリーダーとはこのような状況において、組織や上層部に即座に抵抗ができる者であり、そのためには常に、“どのような目的で働いているのか?自分たちの仕事は社会にどんな影響があるのか?どうやって結果を出すことができるのか?”を考えていなければならないとBrenner氏は語った。また、組織において、ビジネスのゴールが企業のビジョンと矛盾してしまうIllusion point(思い違いのポイント)があり、Illusion Pointを特定し、下からのチャンピオンリーダーを作ろうではないかと会場の参加者を鼓舞した。理想の組織図とはBrenner氏は、組織は、迷宮(Maze)の迷路のようではなく、標的(Bulls-eye)のようであるべきで、標的の中心は顧客であり、そこをセールス、マーケティング、カスタマーサービス、ファイナンス、HR、法務、製品開発などがしっかりと周りを囲むべきであると語った。皆でROIを向上させるという目標を持ち、カスタマーセントリック(顧客中心主義)に主眼を置いて事業を行うべきであると述べた。WIIFTC(What’s In It For Them? Customers?)ミッションの定義づけBrenner氏は、組織内では常に「顧客にはどんなメリットがあるのか?」というカスタマーセントリック(顧客中心主義)な質問を問いかけなくてはいけないと語り、そのためにも「だれを、何について、どうやって手助けするべきだろうか?」(Who,What,How)に答えるカスタマーミッションを定義する必要があると説明した。HR(Human Resources)は新しいマーケティングであるBrenner氏が行った調査によると、「あなたのマネージャーはあなたのアイディアをチャンピオン化してくれると思うか?」」という質問に対して、「取り入れてくれると確信が持てる」と答えた人のうち77%が「自分の現在の仕事が好きである」と答え、反対に「取り入れてくれると全く思わない」と答えた人のうち50%は「自分の現在の仕事が嫌いである」と答えたという。Brenner氏は社内(マネージャーやチーム)から支持を受けている社員は、顧客の擁護者(Advocates)になり、ビジネスに大きな影響を与えると語った。そのためにもマネージャーは、社員のエキスパートになる必要があり、・人脈の育成・パーソナルなブランド構築・キャリアの推進など、社員に自社で働くことでどんな利点があるかを正しく伝えることも重要であるという。Brenner氏は、講演の最後に「チャンピオンは企業のどこにでもいる。社員に自分たちが情熱を持ってやっていることや、知識を共有していこう。衝撃を与える準備は整ったか?今ほど、現状からチャレンジできる時はない。2017年の難しい選択はできるはずだ」とセッションを締めくくった。「2017年:難しい選択の年」まとめBrenner氏はインフルエンサーとして、様々な講演のスピーカーとして活躍しているので、セッションもモチベーション喚起に効果的な言葉や単語が、ふんだんに使われていた。組織において、社員全員がカスタマーセントリックに考えること、そして、上司に言われた通りの任務ではなく、優れたアイディアを提唱し続けるリーダーシップを自分自身の中に持つこと。また、他に優れたアイディアを持つ人がいれば、チャンピオンアイディアを創造するべく、ボトムアップで推進していく重要性などを語った。ソーシャルを最大限に活かすコンテンツ、LinkedInでのマーケティングでの成功とは?次に紹介するのは、CA Technologies社、 Director of Digital MarketingのAndrew Spoeth氏による「A LinkedIn Marketing Success Story.」 (LinkedInマーケティングの成功例)と題したセッションである。LinkedInは世界最大級のビジネス特化型のソーシャルネットワーキングサイトである。Spoeth氏は、自社CA Technologies (以後CA社) を例に、LinkedInを通じて、いかにセールス収益を成功に結びつけることが出来たかを語った。CA社のLinkedInでのマーケティングタイムライン・2012年夏 ― LinkedIn専属でマーケティングを担当する社員を選出・2014年7月 ― Marketoのソーシャル用プログラム導入・2014年秋 ― LinkedInでのスポンサー提供・2016年1月 ― BirstDateの最初の分析を始める・2016年4月 ― 初期設定金額$1Mを超えるセールスコンバージョンに成功・2016年夏 ― LinkedInリードアクセレレーターを試験導入氏は、「LinkedInでの本格的なマーケティングを始めて5年近くになるが、決して簡単な道のりではなかった。」と述べた。しかし、ようやく成果が表れだしており、147件の商談が得られ、そのうち35件は1件あたり$1M(ミリオン)以上を超えるものだという。ソーシャルメディアにおけるKPIは?ソーシャルメディアのピラミッドの最下段はAudience(オーディエンス)。これは、ピラミッドの基盤になる段でフォロワー、購読者、ファンなどを指す。フォロワーを構築することで、ブランド認知が増加する。その上段はEngagement (エンゲージメント)である。これはユーザと関連性があり、価値のあるコンテンツ(ブログやビデオなど)の閲覧行為を指す。エンゲージメントの上段はAmplification (増幅)。これはシェア、リツィート、いいねなどの拡散行為を指す。ユーザがコンテンツをシェアすることで、類似のオーディエンスが倍増する。そしてピラミッドの最上段がLeads(リード)である。Multi-Touch Attribution Model(マルチタッチアトリビューションモデルの採用)Spoeth氏は、営業プロセスや全ての測定できるタッチポイントを考慮する必要性があり、チャネルごとに重要度を変えつつも、最も新しいタッチポイントを重視すべきであると語る。※CA社のマルチアトリビューションモデル例・2016年6月9日 ― Google検索からコーポレートサイトを訪れる・6月15日 ― CA社のWebinarに申し込み・8月10日 ― LinkedInスポンサーのアップデートに申し込み・9月6日 ― CA社のバーチャルイベントに参加・10月15日 ― 事例集をダウンロード・10月20日 ― セールスが対応CA社の考えるソーシャルメディアによる熟成モデルとは1.Track Brand Presenceフォロワーやいいねなど、ブランド認知を計測する2.Drive Engagementコンテンツへのエンゲージメントを加速させる3.Connected Engagementユーザとエンゲージメントを得るためにCRMの導入、カスタマージャーニーの作成、エンゲージメント分析を準備する4.Connected Conversationブランドと見込み客が“ソーシャル上での”会話(コメント、リツイート、いいね!)でつながる5.Multi-Connected Conversation社員、ブランド、見込み客が多対多(Many to Many)の会話でつながるAdvocates(支持者、擁護者)からのサポートの重要性(Power of Advocacy)支持者が増えることにより、その支持者の支持者も加わり、オーディエンスが一気に加速する。ソーシャルの良さを最大限に活かす姿勢・ “コンテンツ”を届ける・会話のトーンはヒューマン(人間らしさ)にこだわる・単に要件を伝えるメッセージではなく、実際の社員の写真や言葉を使ったり、パーソナルなメッセージを心掛ける。あくまでもソーシャルメディアであることを理解する・オーディエンスセントリックであることインナーコミュニケーションの洗練そして、成功に導くには、社内の他部門も合わせた密なコミュニケーションが最重要である、と締めくくった。「LinkedInマーケティングの成功例」まとめ今日多くの企業がソーシャルメディアを収益活動につなげるようと取り組んでいるが、成功に導くのは簡単ではない。今回のセッションでSpoeth氏が最も強調したのは、CA社はLinkedInマーケティングにおいて、オーディエンスセントリック(聴衆中心)モデルの構築に徹底して取り組んでいることである。CA社のLinkedInマーケティングは、ソーシャルの強みを活かしたマーケティングの成功例と言えるが、最後にSpoeth氏がセッションで語った言葉を引用する。“Don’t lose touch of what social is good at: making people feel special. As you scale strategy, don’t lose sight of the social part of it.“「ソーシャルの本来の良さを失ってはいけない。それは人々を特別な存在だと感じさせるもの。戦略の拡充を図る際も、”ソーシャル“な部分を失ってはいけない」