エンゲージメントエコノミー時代を勝ち抜くためにはキーノートはMarketoのCEO、スティーブ・ルーカス氏からスタート。マルケトが提唱する「エンゲージメントエコノミー」の重要性と、企業が勝ち残るために何をすべきかについて語られた。ルーカス氏は、以下の調査データを提示し「顧客の期待は大きく変化しており、マーケティングに対する顧客のハードルは従来以上に上がっているのが現状だ」と述べた。・79%:「私を」理解し大切にしてくれるブランドだけを検討する人の割合・70%:「理解されている」と顧客が感じることで決まる購買体験の割合・66%:ブランドとのインタラクションがパーソナライズされることを期待している顧客の割合「適切な時に、適切な情報を、適切な人に、適切なチャネルで届ける」このマーケティングの役割は変わらない。しかし私達が理解しておかなければならないのは、「顧客のカスタマージャーニーは直線的ではない」ということ。「マーケティングされたいと思っている顧客は一人もいない。しかし、誰もがエンゲージされたいとは思っている」ルーカス氏はこう続けた。つまり、人々は企業とのコミュケーション自体を嫌がっているわけではなく、数ある情報の中から本当に自分にとって価値のある情報だけが欲しいのだ。テクノロジーの急速な発達により、検索、SNS、メールなど、顧客の情報収集手段は多様化しており、チャネルの増加に伴ってコミュニケーションも複雑化している。従来のようなファネル型のフローではなく、顧客ごとにパーソナライズされたコミュニケーションを可能にすることが今後のマーケティングには重要であり、実現するためにはエンゲージメントエコノミー時代を勝ち抜く必要がある。ルーカス氏が挙げた「エンゲージメントエコノミーを成功に導くためにマーケタ-がすべきこと」は以下の3つ。・データ収集・分析すること・顧客体験を設計しエンゲージを与えること顧客の声に耳を傾け、 顧客が何を望んているのか分析・学習し、適切な時に、適切な情報を、適切な人に、適切なチャネルで届けること。それがマーケティングにおいては重要であり、そうしたコミュニケーションを続ける中で顧客との間に育まれるものこそが、『エンゲージメント』であるということだ。ルーカス氏は最後に「新しい世界はエンゲージメントエコノミーにあり、この流れはさらに加速していくだろう。人々はパーソナライズされたエンゲージを求めている。」という言葉でキーノートを締めた。マーケティングとMarketoの未来続いて登場したTK Kader氏、福田康隆氏からは、Marketoの方向性や注力領域など、今後の具体的な取り組みについて語られた。マルケトは今後、アカウントベースドマーケティング(ABM)のソリューションに加え、AI領域などのプラットフォーム強化にさらなる投資を実行すると同時に、エンゲージメントエコノミーを実現するマーケター育成に注力をしていくことが言及された。エンゲージメントエコノミー時代の成長戦略続いて行われたのはスペシャルパネルディスカッション『Marketo×Forbes JAPAN』。Forbes JAPAN 九法氏がモデレーターを務め、株式会社トラストバンク 武内氏、VAIO株式会社 花里氏、富士フイルム株式会社 板橋氏との「エンゲージメントエコノミー時代の成長戦略」と題したトークセッションが行われた。・新しいユーザーを増やすためにはどのようなアプローチが有効か?・ユーザーを「ファン」にするためには何が必要か?・大量の情報が飛び交う中、ユーザーに刺さる情報をどうやって届けるか?テーマは上記の3つ。各企業が実施してきた施策と経験談を基に回答する形でセッションは進んだ。それぞれのテーマに対しての取り組みは、デジタルとリアルの側面含め各企業様々ではあったが、成果を出す上で重要なこととして共通していたのは、「ユーザーの話を聞き、その結果を商品に活かす、あるいはコミュニケーションの形態を変えていく」ということ。上記3社は顧客とのエンゲージメントを重視した取り組みの積み重ねによって成果を上げており、参加していたマーケターにとって参考になる大変良いモデルケースだ。顧客とより良い関係を構築すること、エンゲージメントを高めていくことこそが今後のマーケティングの最重要課題であると再認識できたトークセッションだった。まとめスティーブ・ルーカス氏はこれからのマーケティングにおいて重要なのは「サイエンスとアート」だと言っている。エンゲージメントエコノミーという新たな時代に、マーケターはサイエンティストのように様々なデータを分析し活用する一方で、アーティストのように人の心を深く理解する感性が必要ということであろう。テクノロジーの進化によって、今後より顧客とのコミュニケーションはより複雑化していくかもしれないが、根底にあるのは、「人の声を聴き、心を深く理解すること」。デジタルでのコミュニケーションが当たり前の時代だからこそ、マーケターは顧客を理解することに努め、その上でオンライン、オフラインをまたいだ最適な方法で顧客と向き合うことが求められている。