リテンションマーケティングとは「既存顧客」を「保持」することここでは、リテンションマーケティングの定義や新規顧客開拓との方向性の違いについて解説します。リテンションマーケティングの定義リテンションマーケティングの「リテンション(retension)」とは、「維持、保有、保持」という意味があります。リテンションマーケティングは継続的に顧客であり続けてもらうための活動という意味の用語です。マーケティング用語で一般的な「顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management))」もリテンションマーケティングの一種です。リテンションとアクイジョンアクイジョン(acquisition)とは「獲得、取得」という英語で、新規顧客獲得を意味します。アクイジョンは自社商品・サービスを認知してもらい、魅力や利点を伝え、価値を理解してもらう企業活動です。通常、積極的なマーケティングという意味も含まれます。一方リテンションは、現状の良好な関係を顧客ごとに維持するための堅実な施策であることが一般的です。リテンションマーケティングのメリット経営にリテンションマーケティングを導入するメリットとは何でしょうか。ここでは、企業側からみたメリットを4つ紹介します。費用対効果が高いリテンションマーケティングのメリットは費用対効果が高いことです。新規顧客獲得(アクイジョン)は既存顧客の維持に比べて5倍の費用がかかることが「1:5の法則」として知られています。また、売上の8割は2割の優良顧客で占められている「パレートの法則」が適用できる企業が多いため、企業にとってリテンションマーケティングは非常に有効です。「顧客離れを5%低くすれば利益率が25%以上アップする」という「5:25の法則」もよく知られたマーケティング理論です。LTV(顧客の生涯価値)を高められるLTV(Life Time Value)とは「顧客生涯価値」と呼ばれ、顧客の取引開始から終了までの通算利益を意味する指標です。LTVが高まると、売上は向上します。LTVを高めるには、リテンションマーケティングによる顧客満足度を維持する細やかなアフターフォローや、関心をつなぎとめる定期的な営業活動などが必須です。休眠顧客や離反顧客を取り返せるリテンションマーケティングの対象は優良顧客に限りません。休眠顧客や離反顧客に対してアプローチすることで、再び商品を購入したりサービスを利用したりするように働きかけます。先に紹介した「5:25の法則(離反客を5%減らすと利益率が25%以上向上する)」にあるように、こうした顧客層をリピーターに戻せば、大きな改善効果を期待できるでしょう。重要KPIのひとつである「継続率」を高められるリテンションマーケティングでは、顧客満足度を高めることでリピーターやファンを獲得できます。たとえばスマートフォンアプリ開発企業においてはリピーターやファンの割合を推定できる「継続率」がKPIのなかで重視されます。これはBtoBにおいても同様です。継続率を高めて望ましい評判を得れば、業界における地位が上がり、新規顧客の呼び込みにもつなげられます。リテンションマーケティングが注目されている背景なぜ現在、リテンションマーケティングが注目されるのでしょうか。そこには業種を問わない市場動向の変化があります。新規顧客獲得が難しくなったデジタルマーケティングが主流になり、訪問営業のように成約に直接結びつく従来のアプローチが難しくなってきました。日本では労働力減少の問題もあり、営業の人員不足から十分な数のアプローチができない企業も少なくありません。さらに競合他社が類似製品を提供するまでの期間が短く、価格競争も激化しており、新規顧客獲得のコストは増大傾向にあります。利用者が情報を発信するようになった顧客の声をよく聞くことが重要になったことも、リテンションマーケティングが注目されている背景のひとつです。WebやSNSによって双方向コミュニケーションが普及し、消費者・ユーザーの意見やニーズを分析し、マーケティングに反映できるようになりました。また、BtoCだけでなくBtoBにおいても口コミによる宣伝効果が期待できる環境になっています。MAの進化ツールの進歩により、専門のエンジニアがいない企業でも、リテンションマーケティングのためのMA導入が簡単になりました。コンサルティングや運営支援サービスを利用すると、さらにハードルは下がります。既存の顧客データを入力したり、WebやSNSなどを通じて新たにデータを集めたりすることでリテンションマーケティングに応用できます。データが蓄積されると、既存顧客をセグメント化し最適なアプローチが可能です。リテンションマーケティングを効果的に行うにはここでは、リテンションマーケティングを効果的に行うポイントを5つ紹介します。データ収集・分析するリテンションマーケティングを行うには、十分な量のデータがあることが前提になります。それらのデータを分析することで既存顧客を熟知できるからです。リテンションマーケティングにおいては、購入履歴や自社サイト内での行動履歴などの膨大なデータを処理することになるため、MAやCRMなどの導入が不可欠です。契約や購入などの成果だけでなく、解約や離脱の原因なども含めて解析します。データ共有リテンションマーケティングはマーケティング部門が関与する割合が大きいものの、要になるのはやはり営業活動です。特にBtoBにおいては営業活動での顧客体験が重要になるでしょう。そのため、購入履歴やアンケート結果などをマーケティング部門が分析して営業に伝えるなど、社内の情報共有が重要です。部署間の連携ができなければ、データを活用して具体的な施策につなげられません。顧客のセグメント化既存顧客をセグメント化し、最適なアプローチを選ぶことがリテンションマーケティングの成果を高めるうえで重要です。理想的には「One to Oneマーケティング」(顧客一人ひとりに合わせたサービス)の提供を目指しましょう。セグメント化することで「優良顧客に手厚いフォローをする」「利益を上げていない顧客に社内リソースを使いすぎない」などの対策が実現できます。ロイヤルカスタマーを作る売上の8割は2割のロイヤルカスタマーが占める傾向があることが知られています。ロイヤルカスタマーとリピーターを分ける要素は、自社に対して特別の愛着や信頼を持っているかどうかです。このような評価を得るためには、長期間の継続的なフォローが欠かせません。また「あなただけ」という特別感を持ってもらう施策も必要です。CRM・SFA・MAなどツールを使った定期的なフォロー定期的なフォローがなければ既存顧客は離脱・休眠してしまいます。しかし、消耗品が切れたタイミングで営業訪問することや、アクセスが途切れた顧客だけにDMを送るなどの管理は負担がかかるものです。こうした業務にはCRMやSFAなどのツールを用いましょう。顧客情報からターゲットとなる顧客リストを抽出したり、優先順位に応じた訪問計画を自動的に作成したりできます。MAツールも定期的なフォローに欠かせません。購買や閲覧の履歴、個人属性などと紐づけてメールを配信したり、SNSに表示する広告を最適化したりできます。ただし、海外のMAやCRMなどのツールは日本企業にあわないことが多いため、注意が必要です。導入する際は自社のマーケティングや営業、カスタマーサポートにあった製品を選びましょう。導入後に課題になりやすいことはWebコンテンツ制作やメールマガジン作成などの負担です。興味や関心を引ける材料がなければリテンションマーケティングは成功しないため、広報や営業を問わず会社全体で課題を共有する総合的なマーケティング体制を整えましょう。リテンションマーケティングの活用事例ここでは、リテンションマーケティングを活用した3つの企業事例を紹介します。One to Oneで成功したリテンションマーケティング株式会社マックスヒルズは地域密着型企業を対象とした広告代理店として業績を伸ばしています。マックスヒルズはBtoB向けMAツールを導入することで、見込み顧客ごとにカスタマイズしたメール送信や、Webサイトの行動履歴をもとに最適なタイミングで訪問を申し入れるなどの施策を行いました。これにより見込み顧客の獲得率が10倍以上になったといいます。また、営業手法を可視化することで、社員育成期間も大幅に減らせました。リテンションメールを活用したリテンションマーケティング家具のEC事業を行うOne Kings Lane社は、フレンドリーで細やかなリテンションメールにより業績を伸ばせたといいます。リテンションメールとは、主に初回購入者や無料登録をした人に対し商品・ブランドに対する理解を深めてもらうためのメールです。お得なクーポンを発行して、購入を促す施策もよく行われます。初期の離脱率を下げることで、業績を伸ばすリテンションメールは、業種を問わず導入できるのではないでしょうか。コンテンツ制作によるリテンションマーケティングパナソニックは顧客に有益な情報をブログやeブックで配信してリードナーチャリングに成功しました。問合せメールへの回答として、できる限り自社のブログ記事やeブックのリンクを返信することで、情報提供だけでなく、他の商品・サービスへの関心を持ってもらいました。リテンションマーケティングでは戦略があっても、顧客にアプローチする材料(コンテンツ)がなければ成功しないため、顧客とのつながりを維持して次のアクションを起こしてもらうコンテンツの準備が重要です。まとめ新規顧客開拓が難しくなるなか、既存顧客を重視することでLTVや営業効率を高められるリテンションマーケティングが注目されています。顧客データの分析を行い、部門間でデータ共有するためにはMAやCRMなどのツールが必要です。ワンマーケティングの強みは、MA導入支援やコンサルティングだけでなく、MA運用に必要なMA設定、コンテンツ・制作まで伴走支援できることです。人的リソースやノウハウ、スキルが足りないと感じる場合は、ワンマーケティングのBtoBマーケティングサポートを活用してはどうでしょうか。