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セールスイネーブルメント導入の5ステップ。 第一人者の山下貴宏さんが解説

山下貴宏さん
株式会社R-Square & Company代表取締役社長/共同創業者。

法政大学卒業、米国Baylor University奨学金派遣留学。大学卒業後、日本ヒューレット・ パッカードに入社し、法人営業を担当。その後、 船井総合研究所を経て、外資系人事コンサルティングファームであるマーサージャパンで人事制度設計、組織人材開発のコンサルティングに従事。その後、セールスフォース・ドットコム入社。セールス・イネーブルメント本部長として、日本及び韓国の営業部門全体の人材開発施策、グローバルトレーニングプログラムなどの企画・実行を統括。イネーブルメント部門の規模を4倍に拡張し、グローバルトップの営業生産性を実現。2019年同社を退社し、セールス・イネーブルメントに特化したスタートアップ、R-Square & Companyを立ち上げる。

セールスイネーブルメント導入は何から手をつける?

セールスイネーブルメントでは何から着手すべきか? 文献やインターネットではまず「兼任・専任人材のアサイン」から始めると説明されています。私もお客様とよく議論になります。

しかし、私はまず「営業データの収集と整備」がセールスイネーブルメントの第一歩となると考えます。

理由の2つあります。1つ目は、人材のジャッジが難しいこと。2つ目は、SFAさえあれば場合によっては、専任人材がいなくても機能します。第1回目でも説明しましたとおり、セールスイネーブルメントの目的は「成果につながる営業人材の育成」です。

私は、仮にセールスイネーブルメントではなくとも、営業データに基づいて、育成のPDCAが回ればいいと思っています。なので、必要な要件として、大前提であるSFA、営業データの収集と整備が最初のフェーズと考えます。

その結果をもとに、自社の課題を知る、育成テーマを知る。ここがスタートになります。この考えをもとにセールスイネーブルメントを構築する5つのフェーズを解説します。

セールスイネーブルメント構築の5つのフェーズ

私はセールスイネーブルメントを構築するには、5つのフェーズがあると考えています。

フェーズ① 営業データの収集と整備

前述しましたが、最初のフェーズは、営業データの収集と整備になります。ここで重要になるのは、顧客視点で営業プロセスを管理しているかどうかです(詳しくは第1回目「セールスイネーブルメントとは」)。

実はこのSFAのデータ収集と整備がもっとも高いハードルになります。コンサルティングをする際も十分な時間をかけて議論します。ですので、多くの企業はデータの見直しから始めます。企業によって営業プロセスは異なりますし、常にPDCAを回していく必要があります。

まずは自社のトップセールスマンをロールモデルにする。または営業メンバーを一堂に集めて、どのアクションにどういう効果があるのか、などヒアリングをするのが効果的です。営業プロセスの共通項が抽出できますし、それぞれのメンバーがどういう営業プロセスをしているかを共有するだけでも大きい意味を持ちます。

フェーズ② 兼任・専任人材のアサイン

フェーズ①で自社の課題と育成のテーマを把握したら、次に「兼任・専任人材のアサイン」をおこないます。

適した人材のマインドセットは、「育成が好き」「育成に関心がある」です。営業出身がなるケースもありますが、育成に関心がないとどうしても「俺のやり方を真似ろ」というスタンスが出てしまいます。

スキルセットでは、体系化思考、いわゆるオペレーション化する能力とコミュニケーション能力です。

適任者は、育成マインドを持った体系化思考の方がベストです。営業経験はあった方がベターですが必須ではありません。

また組織のどこにプレイスメントするかという質問をよくありますが、基本的には営業部のなかで問題ありません。海外企業の7割は営業部のなかにあります。

私がセールスフォース・ドットコム時代には、経営企画部門でした。営業に関わる部門間での連携などを考慮する場合は、経営に直結する位置だったり、営業企画が考えられます。

担当者の人数ですが、大体営業組織の1〜3%が目安です。100人でしたら、2、3人です。タスクは多くありますが、フェーズ①のデータ収集と整備がしっかりできていれば課題は明確となりますので、優先順位をつけて順次アクションしていきます。

フェーズ③プログラムの開発と提供

この段階になると、データと育成テーマも固まっており、担当者も決まっています。まずは課題にヒットする具体的なコンテンツをひとつでいいので、まずは現場に提供します。そして、まず担当者・担当チームにスモールウィンを経験させます。

担当者と営業メンバーの双方に、「この取り組みは効果がある」と実感してもらい、社内でセールスイネーブルメントの市民権を得ることが重要なのです。営業メンバーからしてみたら新しい施策は「本業以外の負荷」になってしまいます。組織として、まずはセールスイネーブルメントのスモールウィンを積み重ねていく。これが大切です。

そして、育成のコンテンツは大きく2種類に分けられます。「トレーニングコンテンツ」と顧客に持っていく「営業コンテンツ」です。

トレーニングコンテンツ

受け手(営業)が聞く価値がある思うコンテンツにする必要があります。Eラーニングや紙ベースのコンテンツなど色々考えられますが、トレーニングでもっとも重要なのは、各メンバーが自分ごと化して営業プロセスのどこに埋め込むか、です。ラーニングだとどうしても“読む”行為に集中してしまいます。

そのため私はレクチャー形式のグループワークなどを通じて、考えさせるのを重視していました。

営業コンテンツ

営業コンテンツはさらに「事例」「競合情報」や「提案書のテンプレート」などが代表的です。ポイントは、すぐに利用でき、効果的であることです。

ハイパフォーマーの提案書を共有するだけでも効果があると思いますが、業界別、プロダクト別にセグメンテーションした提案資料を、営業プロセスごとに一元管理をする。

セールスフォース・ドットコムでは、「イネーブルメントポータル」というツールを作りました。営業資料や提案資料がセグメント化されて一言管理されているので、必要に応じて営業マンが利用できます。

フェーズ④データの蓄積と営業組織の検証

フェーズ④ですが、ここでのポイントはどのデータを利用するのか、予め摂家設計しておくことです。スキルなのか、アセスメントデータなのか、KPIとなる指標を定めておくことです。

なぜならデータを取ろうと思えばいくらでも取れてしまいます。トレーニングの成果は比較的蓄積しやすいですが、過去の学習やトレーニング履歴は意外と散在してしまいますので、KPI設計が重要です。

イネーブルメントチームのKPI、組織全体のKPIはもちろんとして、各コンテンツの成果をどのデータを指標にするかをセットで考えておきましょう。

フェーズ⑤経営層とのイネーブルメント結果レビューサイクルの確立

最後のフェーズは、成果の経営層への報告と次の取り組みにむけた議論になります。目的は取り組みに対する経営層の賛同を得るためと、営業組織に対して周知をしてもらうためです。

セールスイネーブルメントはサイクルを回していくのが前提です。そのために成果を報告して、常にプログラムを提案して、賛同を得る。そして、また次の課題解決に向けて動き出します。

3年でPDCAが可能な育成プラットフォームができる

セールスイネーブルメント構築の5つのフェーズを説明しました。大きく5つに分解していますが、特に①と③は時間もかかりますし、施策全体の成否を握る重要なフェーズとなります。

データの収集と整備から始めて、コンテンツを提供し、データを蓄積して成果を検証する。ここに至るまではおおよそ3年くらい地道な活動がつづくと考えてください。

3年かけてやるメリットとは? と私もよく相談を受けます。それは繰り返し述べてきたセールスイネーブルメントの目的である「成果につながる営業人材の育成」基盤をつくるためです。育成だけでも時間がかかる上それを基盤として整備するのに1年で終わるわけがありません。を、“トレーニング”といった「短期的」で「プログラムレベル」で捉えてしまうと、ピントがボヤけてしまうのです。

企業には中長期の経営計画があります。その中のどの領域に対してイネーブルするのか? という視点が必要になります。例えば、経営計画に毎年50人、3年で150人採用する。新規領域での売上が5億から3年後には50億にする。などがあった場合、誰がどのように育成をして、どういう施策を打つのか?

セールスイネーブルメントは3年あれば、PDCAサイクルが回る育成プラットフォームができます。これは大きなアドバンテージです。

第3回では、「セールスイネーブルメントの事例」を解説します。どのように企業がセールスイネーブルメントを構築し、営業組織を強固にしていったかを具体的に紹介します。

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