VAIO株式会社マーケティング室 ダイレクター 福島 嗣雄 氏1994年、ソニー株式会社に入社。渉外業務や事業戦略、経営戦略に携わる。VAIO株式会社設立とともに移籍。法人営業・マーケティングの組織づくり、体制づくりの陣頭指揮をとる。VAIO株式会社マーケティング室 マーケティングプランナー 日高 康成 氏2016年、VAIO株式会社に入社。VAIOのBtoBビジネス強化を牽引するメンバーの一人。MA/SFAの社内導入から運用までBtoBマーケティングの全般を手がける。マーケティング強化に向けて、まずは全社的な“意識合わせ”を。垣内:実は、私たちは福島さんからお声かけをいただいて、一緒にお仕事をさせていただくことになりました。どのようなきっかけでマーケティングの必要性を感じられたのでしょうか?福島:VAIO株式会社は、長野県安曇野市にある生産拠点に本社を置きスタートしました。営業もマーケティングも、組織としては何も無い状態からの始まりでした。ご存知のとおり、PC市場はタブレット端末やスマートフォンに押され、右肩下がりの状況です。そんな中、比較的市場が安定している法人向けに舵を切ることになりました。まずは法人のお客様に向けた“ものづくり”に取り組み、良い製品と生産体制ができあがったところで、次は“売りをつくる”ところへ視点を向け、BtoBマーケティングの強化に取り組むことになりました。垣内:マーケティングの強化というものは、どのように進められていったのでしょうか?福島:私がまず重要視していたのは「トーンセッティング」です。よくオーケストラで演奏が始まる前に皆で音合わせをしますよね。その準備期間こそ、いちばん重要だと考えています。福島:皆で同じ目標を持って取り組み、「何をすべきなのか」が一般の社員にまで浸透するような流れをつくっていく。よくKPIという言葉が使われますが、その上位概念としてKGI 「Key Goal Indicator(キー ゴール インジケーター)」があります。たとえば、法人向けPCの販売50万台を目標にしましょうと、明確な目標を掲げる。それを達成するためにそれぞれが何をすればいいのか、部長・課長をはじめとする中間管理職がきちんと認識したうえで部下を動かしていく。こうした意識合わせを始めに徹底しました。営業・マーケティングの組織づくりを、たった一人から。垣内:当初、マーケティングの体制というのはどのような規模だったのでしょうか?福島: VAIO株式会社の設立時、東京オフィスはわずか9名からスタートしました。もともとWEBやカタログを制作するチームはあったのですが、法人営業・マーケティングという意味では、実は私一人からスタートしています。人が増えるまでは、やれる人がやれることを何でもやるというかたちで業務構築を進めていました。ワンマーケティングさんとお会いしたのは、ちょうどその過渡期でした。今では、セールスのスタッフが20名ほど、マーケティングはいろいろ兼務というかたちになるのですが、数名のチームになってきたという状況です。ちなみに私は、今も営業を兼務しております(笑)。インサイドセールスを、オンサイト化。Face to Faceのコミュニケーションへ。垣内:第1部の日高さんのお話では、インサイドセールスのお話が出てきました。VAIOさんは社外のサポートを入れていらっしゃいますが、今期、その場所を自社オフィスに移されました。オンサイトに移行されてみて、実際にいかがですか?福島:今は、法人営業を強化しようとしても、なかなか優秀な人材が揃わないという時代です。そんな中、マーケティング機能を強化して営業の無駄打ちを無くすと同時に、インサイドセールスという、フィールドセールスとマーケティングの間に立って、営業の下準備をしてくれる部隊をつくらなければ回っていきません。福島:当初は、オンサイトではなく社外に業務委託というかたちでインサイドセールスを始めたのですが、フィールドセールスとの連携・意思疎通の難しさを痛感しました。どうしてもメール中心のやり取りになり、ミスコミュニケーションによる弊害も目立つようになってきました。「やはりインサイドセールスも同じオフィスの中でやったほうがいいだろう」ということでオンサイトでの運用を始めたばかりなのですが、立ち上がりとして非常に上手くいっているという状況です。我々はできるだけコールのオペレーターの方と、実際に営業に出るフィールドセールスとがFace to Faceで連絡を取るようにしています。お客様が何を求めていて、どこまで情報を得られているか。きちんと共有したうえで、フィールドセールスとインサイドセールスがどのような方法でお客様とのエンゲージメントを深めていくのか戦略を立てていく。さらに、ABMの情報もあわせて「どういう企業を攻略していこうか」ということも設計していく。こうした体制に切り換え、すでに効果が表れ始めています。日高:インサイドセールスのスタッフさんとのコミュニケーションでは、同じ基幹システムを使えないため、セールスフォースのようにクラウド上へ確実にデータを取り込んでいくことが、まず重要なポイントになります。日高:実際にFace to Faceで話をするのですが、小さな情報のやり取りはSlackというコミュニケーションツールを活用しています。チャンネルと言われる小さなグループをつくって、エスカレーション用、案件発掘の共有用など、インサイドセールスが見つけたものをすぐにフィールドセールスに送れる流れをつくり、常にコミュニケーションを切らさないようにしています。Q(会場からのご質問):Face to Faceのコミュニケーションは、実際にあるものなのですか?日高:オフィス内にインサイドセールスの場所があることに加え、コミュニケーションのためのスペースを別で設け、フィールドセールスとインサイドセールスが顔を合わせるようにしています。Slackで常に情報を連携しつつ、商談に向けた戦略などは、あえて場所をつくって話すようにしています。営業とマーケティング、すべての活動を横串で見て、PDCAを回していく。福島:営業というのはあくまでも“点”で、実際に商談をしているお客様に対してベストなものを提案していく。どちらかというと深く入っていく仕事だと思います。マーケティングはそれを“面”で捉え、すべてのお客様に共通してやっていく。その成果を営業に武器として渡し、お客様ごとにその深掘りをしてもらう。こうした組み合わせがいちばん良いと思っています。福島:どちらかが強過ぎると、たとえば全体最適に走って個々の商談がまとまらなくなる。こうしたことが起きないように、私たちは「営業企画マーケティング」という組織もつくり、営業とマーケティングを横串で見て、皆が上手く動けるように働きかけていく役割も担っています。垣内:マーケターと営業さんでは言語やカルチャーも違うと思うのですが、その対話というのは、どのように行われているのでしょうか?福島:私たちは、リード獲得からクロージングまでを一気通貫で見て、マーケティングと営業それぞれの活動にKPIを設計しています。どこがKPIに達しているか、いないのか、すべて分かるようになっています。たとえば、営業に転換できたホットリードが増えているのに商談のクロージングが伸びないという場合は、マーケティングが集めてきたリードが悪いのではないかという見方もできれば、営業のお客様の懐への入り方が弱いのではないかなど、いろいろな仮説が出てきます。その仮説を一つひとつきちんと検証していく。よく言われますが、やはりPDCAがいちばん重要だと思いますね。垣内:会議なども、数字をもとにお話を組み立てていくのでしょうか?福島:当然、もとになるのはすべて数字です。そして、その数字というものは、基本的には売上・利益にすべて紐付くようなかたちをしていますので、そこに対して皆の持てる力をできるだけ一つの方向にしていきたいと考えています。セールスフォースの活用を促し、あらゆる活動と、売上・利益を紐付ける。日高:今、私たちはセールスフォースを中心にしてデータの可視化と共有を行っています。皆が共通して見られるところにデータを集めておくことで、日々の活動状況がセールスフォースで分かるように設計しています。ツールを使う上で、年齢の壁なども避けられないのですが、営業企画マーケティングというところで、皆の困りごとをサポートすることで、だんだん前に進んできました。垣内:セールスフォースに入力してくれない営業さんがいて悩まれているという話もよく聞きます。そのあたりは、どのようにされているのでしょうか?日高:実際に、入力はしていてもその入力が間違えていることも結構あったりします。私たちのほうである程度チェックはしながら、できるだけ営業の会議に私たちも参加して、その中で少し時間をもらってセールスフォースの活用について話をさせてもらうようにしています。あとは、単にメールを送って「こうしてください」と言っても、どうしたらいいか感覚的に分かりにくい。そこで説明用の動画をつくってみたり、マニュアルを少し細かくつくってみたり、使う人の視点に立って私たちが入ることで、ネガティブな障壁をできるだけ無くしていく方向に動いています。ちょっと工数はかかりますけどね(笑)。福島:セールスフォースを何の目的で導入しているのか、情報を入れるためのモチベーション・インセンティブなどの意識づけと組織設計が重要になってくると思います。私たちも日々試行錯誤しながら改善を重ねているところです。Q.(会場からのご質問):セールスフォースのお話が出てきたのですが、このあたりの仕組みというものは基幹系のシステムとも連動しているものなのでしょうか?日高:すべての売上データは基幹システムにあるのですが、私たちは基幹システムから出荷情報など、必要な情報だけを一部取ってきてセールスフォースの中に格納しています。セールスフォースのデータは売上に紐付き、案件化から商談、購入まで一連で追えるようになっています。営業活動におけるデジタルマーケティングの成果は、早い段階で出始めた。垣内:デジタルマーケティングの成果は、どのくらいの時間をかければ見えてくるものでしょうか?スピード感を持っていろいろな方針を決めていかれる中で、「このくらいまで待つ」という目安があるものなのでしょうか。福島:基本的に「待つ」という発想はないので、すぐに成果を出せと言われています(笑)。売上・利益に出てくるまで持って行こうとするとやはり半年、1年という時間がかかると思います。ただ、今まで飛び込みに近い営業をしていた人が、お客様が商品ページのどこを見ていて、どの展示会やセミナーに来られたのかということを前情報として持てるようになれば、訪問後の商談時間は大幅に短くなりますよね。そういう意味では、営業活動のアクティビティにおける成果というものは、わりと早いタイミングで出始めています。いちばん相談相手になってくれそうな、マーケティングパートナー。垣内:さいごに、一年半ほど前から御社とお仕事をご一緒させていただいているのですが、当然いろいろな会社さんの話を聞かれていると思います。そんな中で、我々ワンマーケティングを選んでいただいた理由をお聞かせいただけますか?福島:我々が法人ビジネスを立ち上げて強化していこうとしている時、「BtoBマーケティング」という言葉で検索して、最初に辿り着いたのがワンマーケティングでした。それは偶然なのか、ワンマーケティングさんの施策なのか、よく分かりませんけども(笑)。まずはその仕掛けが良かったということですね。その後、私がホワイトペーパーをダウンロードしてすぐにインサイドセールスで電話がかかり、すぐに垣内さんが営業に来られた。聞いた話が、非常に分かりやすく腑におちた。他にもいろいろな会社さんに会いましたが、所謂ザ・コンサルティングのような方もいれば、業務委託のオペレーターに近いようなところもあって、「帯に短し、たすきに長し」というような中で、ワンマーケティングさんがいちばん私の相談相手になってくれそうだったということです。垣内:ありがとうございます。福島:でも仲の良い夫婦も何かのきっかけで変わることがありますから(笑)。これからも、良い緊張関係のもとでやっていければと思います。VAIO株式会社の福島様、日高様、たいへん有意義なお話をありがとうございました。