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バリュープロポジションとは?定義や失敗する理由、作り方について解説

近年のBtoBでは、バリュープロポジションが注目を集めています。バリュープロポジションとは、企業が顧客に提供する独自の価値を指す言葉で、市場のニーズが多様化する現代では、欠かせないものになってきました。本記事では、バリュープロポジションの定義や失敗する理由、成功事例とともに、フレームワークの使い方について解説します。

バリュープロポジションとは?

バリュープロポジションとは、企業独自の価値を指す言葉で、現代のマーケティング戦略を設計していく上では欠かせないものです。ここでは、バリュープロポジションの定義と、注目される背景について解説します。

バリュープロポジションの定義

バリュープロポジション(value proposition)は、顧客のニーズを満たしたうえで競合他社では提供できていない独自の価値を指したものです。下図の赤枠のように、顧客のニーズと自社が提供している価値が重なり合う部分の中で、競合他社が提供していない部分が、バリュープロポジションに該当します。

バリュープロポジションを明確化することによって、製品開発や、マーケティング戦略立案や改善に役立てることができます。

バリュープロポジションのイメージ図

バリュープロポジションが注目される背景

バリュープロポジションが注目される背景として、マーケティングの「ニッチ化」が挙げられます。競合の製品やサービスが乱立している現在の市場において、顧客に自社の製品やサービスを選んでもらうためには、独自の価値を出すことが必要です。

ただし、それだけに捉われてはいけません。競合との差別化や独自性を打ち出すことに注力した結果、奇をてらったニッチな製品を出してしまうケースがあります。その場合、顧客の求める価値とはかけ離れた製品ができるため、当然ながらビジネスが成立しません。

競合との差別化だけではなく、競合以上に顧客のニーズにマッチした製品やサービスを提供できるかを重視する必要があります。そのために重要となるのが、バリュープロポジションです。

バリュープロポジションを検討することにより、顧客の目線に立った独自の価値を発見し訴求することができます。現時点で提供できている価値と、顧客の求めている価値のズレも明確にできるため、競合との差別化だけではなく、その競争優位性により売上アップ、利益率の向上にもつながるのです。

バリュープロポジションで失敗する理由

バリュープロポジションで失敗する理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 顧客のニーズよりも自分たちの想いが先行してしまう
  • 既存の企業資産に固執しすぎる
  • 顧客のニーズに応えすぎる

ここでは、3つの理由についてそれぞれ解説します。

顧客のニーズよりも自分たちの想いが先行してしまう

バリュープロポジションを作成する際に失敗する主な理由として、顧客のニーズよりも自分たちの想いが先行してしまうことが挙げられます。自分たちの想いが先行した製品やサービスを提供した挙句、顧客のニーズが置き去りになってしまい、失敗するのです。

自分たちの想いに気を取られ過ぎたケースとして、以下のものが挙げられます。

  • 自分たちの原体験や伝えたいこと
  • 競合他社のサービスに対するアンチテーゼ
  • テクノロジーの優位性
  • 潮流

どんなに自社の想いが強く、最先端な技術を使った製品であっても、顧客が求めていなければサービスとしての価値はないことを理解しましょう。

既存の企業資産に固執する

既存の企業資産に固執することも、バリュープロポジションで失敗する理由のひとつです。
企業資産には、顧客データベースや技術、営業網、ノウハウといったものが該当します。

しかし、これらの企業資産を活かすことばかりを考えてしまった結果、競合他社が提供できない差別化だけを追求したサービスを提供してしまうケースがあります。そうなると、たとえ競合との差別化ができていたとしても、顧客が求めていない製品やサービスを企画しかねません。

この傾向は、成熟した産業や企業の場合によく見られます。企業資産だけに固執するのではなく、フラットな視点で考えることが大切です。

顧客のニーズに応えすぎる

顧客のニーズに応えすぎることも、バリュープロポジションで失敗する理由のひとつです。顧客のニーズは多種多様です。セグメントや個社によって事情も異なります。顧客のニーズを取捨選択せず、幅広く対応しようとした結果、以下の状況に陥るケースがあります。

  • 使えない機能がありすぎて営業が機能や価値を説明できない
  • 訴求メッセージを限定できない
  • カスタマーサポート担当のサポートが追いつかない

顧客のニーズに答えること自体は大切なものの、幅広く対応しようとした結果、本来自社が提供できる価値を届けきれなくなっては意味がありません。どのセグメントの、どのニーズに応えるかを取捨選択し、別の方法での対応に切り替えることが大切です。

バリュープロポジションの成功事例

バリュープロポジションの主な成功事例として以下の4つが挙げられます。

  • Slack
  • Zoom
  • Uber
  • iPhone

どのサービスも、今では生活やビジネスに欠かせないものになりつつあります。ここでは、それぞれの成功事例について解説します。

Slack

Slackのバリュープロポジションは、信頼性と生産性です。シンプルで使いやすいUXにすることにより、組織の規模にかかわらず、必要なコミュニケーションがとれるように設計されています。

シンプルで使いやすいUXにより、情報の共有と蓄積が容易になり、生産性向上につながっています。また、ツールには信頼性やセキュリティの高さも必要です。シンプルなUXとともに、セキュリティの強固さを同時に実現したことにより、安心して使えるツールになり、現在ではさまざまな企業や組織で導入されています。

Zoom

Zoomのバリュープロポジションは、圧倒的なユーザビリティです。直感的に操作できるUIになっているのはもちろん、最大1,000人まで参加できる機能を搭載することにより、会議だけでなく、セミナーやウェビナーにも利用されています。

また、値段設定がわかりやすいことも利用者が多い理由です。新型コロナウイルスの感染対策でリモートワークが広まったことにより知名度を上げ、日本では「Web会議=Zoom」の印象を与えるまでになりました。

Uber

Uberは、タクシーというサービス本来の利便性と、タクシーの利用時に発生する手間や精神的な負担が多いことに着目しました。タクシーは目的地まで効率的に移動できる便利なサービスである一方、電話での呼び出しや状況を把握していない配車係との会話、運転手への目的地の説明、小銭の心配といったわずらわしさがありました。

アプリで事前に料金やルートを表示することにより、タクシー利用時の手間を解消し、ユーザー側の精神的な負担の軽減につながりました。それにより、目的地に移動する効率的な方法という、タクシー本来が持っているメリットを最大化することに成功したのです。

iPhone

iPhoneは、直感的に操作しやすいUXと優れたデザイン性に着目しました。当時の携帯電話は、さまざまな機能を搭載しているものの、直感的な操作がしづらいという課題がありました。

競合との差別化を図るため、携帯電話を単なる機能の集合体にするのではなく、スマートフォンという美しいデザインと直感的な操作ができる新しいカテゴリを創出しました。小さなパソコンともいえるスマートフォンの登場により、専用のアプリ開発も進み、今では生活に欠かせないものになっています。

バリュープロポジションキャンバスとは?

バリュープロポジションキャンバスとは、提供価値を整理するフレームワークのひとつです。「自社の製品やサービスの価値が顧客のニーズとマッチしていない」という課題の対策として生まれた手法で、アレックス・オスターワルダーの著書「バリュー・プロポジション・デザイン」で紹介されたことにより、注目を集めました。

バリュープロポジションには、以下の軸が存在します。

  • 顧客セグメント(顧客プロフィール)
  • 顧客に提供する価値(バリューマップ)

顧客セグメントとは、ターゲットすべき顧客の属性であり、その顧客が何をしたいのか、それをするのに何が障壁となっているのか、それをすることでどういった期待があるのか?等をさします。

顧客に提供する価値とは、自社で提供している製品やサービスです。ただし、価値は顧客が求められているかどうかが重要であり、顧客がしたいことをかなえるために、障壁や期待に答えることができているかが需要となります。

つまり、顧客セグメントと顧客に提供する価値は対の関係にあり、対になっていないと顧客に提供する価値とは言い切れないということを理解しなければなりません。

バリュープロポジションキャンバスの作り方

バリュープロポジションキャンバスを作る際、まずは顧客が誰なのか?そしてその顧客に対して、どのような製品・サービスを提供するのか、そこからスタートしなければなりません。そして、その次に顧客のジョブからゲインとペインを作成します。次に自社の製品・サービスからゲインに対してメリット、恩恵をもたらすもの、そしてペインの障害やリスクを取り除けるものを出していきます。

すなわち顧客のニーズを検討し、最終的には、顧客のニーズと自社の提供価値が紐づいていることが重要です。

バリュープロポジションキャンバスを図式化

それでは、バリュープロポジションキャンバスの作り方についてより詳しく解説します。

顧客セグメント:顧客のジョブ

顧客セグメントを検討する際は、顧客のジョブを洗い出すことからはじめます。顧客のジョブとは「家事の負担を減らす」「おいしくて健康的な食生活を送る」といった、顧客が仕事や生活で実現したいことです。

顧客のジョブは、以下の4つに分けられます。

ジョブの種類 概要
機能的な仕事 ・具体的なミッション
 例:掃除をする、文書を作成する
社会的な仕事 ・ステータスが向上する
・周囲から評価を得られる
個人的/感情的な仕事 ・気分が良くなる
・安心できる
サポート的な仕事 ・購入や消費をする際のサポート

顧客セグメント:顧客の利得(ゲイン)

顧客のジョブを洗い出したら、顧客の利得を考えます。顧客の利得とは、ジョブにより顧客が得られる利益や、望んでいる結果です。「ゲイン」とも呼ばれ、例えば「買い物に行かなくても欲しいものが手に入る」といったことが挙げられます。

顧客の利得は、以下の4つに分けられます。

ゲインの種類 概要
必要不可欠なゲイン ・製品やサービスの根幹となるもの
・なくては成り立たないもの
期待されるゲイン ・なくても成り立つが、あって当たり前になっているもの
望ましいゲイン ・あると嬉しい機能やサービス
予想外のゲイン ・思ってもいなかった機能やサービス

顧客セグメント:顧客の悩み(ペイン)

顧客の利得を検討したら、顧客の悩みを洗い出します。顧客の悩みとは、顧客が悩んでいることや、製品やサービスを導入する障害となっていることです。「ペイン」とも呼ばれ、例えば「料金が高い」「量が多い」といったものが挙げられます。

ペインは以下の3つに分けられます。

ペインの種類 概要
問題 ・機能的なペイン
 例:うまく機能しない
・感情的なペイン
 例:UIに不満がある
障害 ・ジョブの障害となっているもの
 例:時間が足りない
リスク ・失敗の原因になる可能性があるもの

顧客に提供する価値:製品とサービス

顧客に提供する価値を検討する際は、製品とサービスを洗い出すことからはじめます。バリュープロポジションの根幹となる項目です。自社の製品やサービスで提供している要素をすべて挙げ、顧客のジョブを達成するために必要な要素を兼ね備えているかを見極めます。

例えば、料理の配達サービスであれば、「おいしい」「健康的」「バリエーションが多い」「安い」「早い」といった要素が挙げられます。顧客のジョブと比べながら洗い出すと良いでしょう。

顧客に提供する価値:顧客の利得をもたらすもの(ゲインクリエイター)

製品とサービスの要素を洗い出したら、顧客の利得をもたらすものを考えます。「健康的でバリエーション豊富な料理を指定した時間に配達する」といった、顧客のゲインを生み出すための具体的な解決策を考えます。

自社の想いを入れるのではなく、顧客にとって有益となるかを確認することが大切です。

顧客に提供する価値:顧客の悩みを取り除くもの(ペインクリエイター)

顧客の利得を考えたら、顧客の悩みを取り除くものを洗い出します。「4個以上の注文で送料無料」「配達日や時間を指定できる」といった、顧客の悩みを取り除くための具体的な解決策を考えていきます。

顧客の利得と同様に、自社の想いを入れるのではなく、顧客の悩みを軽減しているかを確認することが大切です。

ワンマーケティングの事例

弊社で担当しているあるクライアントは、顧客のジョブとして「マーケティング、インサイドセールス、営業の分業体制を整えたい」「社内のセールスマーケティングDXを推進したい」「縦割り組織を解消したい」が挙げられていました。これらのジョブを分析していき、「営業環境の整備」が顧客の最重要課題と捉え、バリュープロポジションの策定をスタートしました。

ゲインには「MA、SFAを導入したが活用できていない」「営業とマーケティングの連携がとれていない」「マーケティング担当者の教育をしたい」が挙げられました。ここから見える課題は「営業やマーケティングの連携やMA、SFAの機能が不明瞭であること」です。

顧客セグメントに対し、ワンマーケティングではツール導入の知見提供や実装、コンテンツマーケティングの支援、人材育成のサポート、リードライフサイクルの構築などのマーケティングサポートサービスをワンストップで提供することができます。このようにしてワンマーケティングでは「売上を上げるための、営業とマーケティングの仕組みをつくること」を提供価値として導き出しました。

キャンバスを利用したフレームワーク例

キャンバスを利用した主なフレームワークは、以下の3つです。

  • ビジネスモデルキャンバス
  • ジャーニーマップ
  • リーンキャンバス

ここでは、それぞれのフレームワークについて解説します。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスとは、事業の価値を創造するためのフレームワークです。ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つの項目で構成されています。

  1. 顧客セグメント
  2. 提供価値(バリュープロポジション)
  3. チャネル
  4. 顧客との関係
  5. 収益の流れ
  6. 主なリソース
  7. 主な活動
  8. 主なパートナー
  9. コスト構造

バリュープロポジションキャンバスで洗い出した「顧客セグメント」と「顧客に提供する価値」は、ビジネスモデルキャンバスに活用することも可能です。

ジャーニーマップ

ジャーニーマップは、顧客が製品やサービスに興味を持ち、購入に至るまでのプロセスを表したものです。自社独自の価値を見つけるうえで、価値に優先順位をつける必要があります。

ジャーニーマップと顧客セグメントを組み合わせることにより、顧客のジョブに優先順位をつけるためのヒントとなります。

▽バイヤージャーニーに関する記事もご用意しております。興味がある方は、以下よりご覧ください。
バイヤージャーニーの意味は?基礎知識や活用例・メリットも紹介

リーンキャンバス

リーンキャンバスとは、最適なビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークです。新しいビジネスモデルを企画する際などに使用されます。バリュープロポジションキャンバスと併用することにより、顧客のニーズと提案できる価値がマッチしているかを見極めることが可能です。

リーンキャンバスは、以下の9つの要素で構成されています。

  1. 顧客セグメント
  2. 顧客の課題
  3. UVP(独自の価値提案)
  4. ソリューション(課題解決)
  5. チャネル
  6. 収益の流れ
  7. コスト構造
  8. 主要指標
  9. 圧倒的な優位性

ビジネスモデルキャンバスと同様に、バリュープロポジションキャンバスで洗い出した「顧客セグメント」と「顧客に提供する価値」を当てはめ活用すると良いでしょう。

まとめ

バリュープロポジションとは、製品やサービスにおける独自の価値を指したもので、現代のマーケティングでは欠かせないものになっています。競合の製品やサービスが乱立している現在の市場では、バリュープロポジションを見つけ、顧客のニーズにフィットしたサービスを提供することが大切です。

しかし前述したとおり、「想いが先行する」「企業資産に固執する」「ニーズに応えすぎる」といったことをしていた場合、価値提供とニーズがマッチしにくくなってしまいます。

提供価値を知るためには、まずは「見込み客は誰なのか?」を正しく理解し、体型的に提供価値を見つけるために、フレームワークを活用することが有効です。バリュープロポジションを整理するフレームワークの代表的なものは、バリュープロポジションキャンバスです。

バリュープロポジションキャンバスを活用することにより、顧客セグメントや提供する価値を洗い出すことができます。また、キャンバスを利用したフレームワークもあり、併用すれば、さらにバリュープロポジションキャンバスの精度を上げることができるでしょう。

BtoBマーケティング支援に特化したサービスを提供している「ワンマーケティング株式会社」では、バリュープロポジションキャンパスの活用方法がわかるホワイトペーパーを提供しています。

バリュープロポジションキャンパスに関するノウハウもまとめていますので、以下から資料をダウンロードいただき、ぜひビジネスにお役立てください。

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