2023年7月21日に、弊社代表の 垣内が書籍『「売れる営業」を創出するBtoBマーケティングの「型」』を出版いたしました。これを記念して、2023年11月7日に、ローム株式会社の原氏をゲストに迎え、対談講演「グローバル企業のデジタルマーケティングに迫る|5年間の変遷を一挙公開」を開催しました。本記事では、ローム社における、グローバルに事業を展開してきた取り組みや、デジタルマーケティング推進の取り組みについての対談内容をご紹介します。原 直人 氏ローム株式会社マーケティング・コミュニケーション部 統括課長垣内 良太ワンマーケティング株式会社代表取締役マーケティングの変遷と現在のミッション垣内:今回は、ローム株式会社マーケティング・コミュニケーション部の原様をお迎えしています。さっそくですが、自己紹介と会社の紹介をお願いできますか?原氏:私は広告会社を経て、2005年にロームに中途入社しました。広告、イベント、広報、ブランディングなどを担当した後、2014年からドイツ、2019年からは上海に出向し、2022年10月に帰任して、現職になります。ロームは1958年に設立された半導体電子部品のメーカーで、主な製品は、LSI(大規模集積回路)、トランジスタダイオードのような半導体素子です。それ以外にも、複合部品のモジュール、抵抗器といった電子部品も販売しています。垣内:ありがとうございます。当社とローム様とのお付き合いはもう10年くらいになります。今回、5年間の変遷と言いつつ、10年間くらいのお話になりそうだなと思っているのですが、2012年頃からローム様がマーケティングで取り組んできたことを教えてください。原氏:2012年頃は展示会への出展が非常に多くて、そこで御社に相談などもするようになりました。2013年には展示会だけではなく独自のセミナーを開こうということで、まず電源ICに関するセミナーを始めました。翌年の2014年にはオンラインでの活動も強化していこうと、電源の設計や基礎を学べる「Tech Web」というオウンドメディアを作りました。私がドイツにいた2015年には「Marketo(マルケト)」というすごいツールがあるぞ、ということで、当時のWebチームが導入を決め、そこからデジタルマーケティングが始まったというところです。Marketoは2016年には海外展開を始め、日本語だけだったTech Webも多言語展開が進みました。その後、Tech Webのコンテンツがさらに増え、Marketoを本格的にデジタルマーケティングのMAツールとして使っていきました。2018年にはWebサイト自体をデジタルマーケティングの方法に合わせてリニューアルして、セミナーがウェビナーになっていきました。垣内:私はウェビナーを開催するという話を聞いて、集客が大変なんじゃないですかと言って止めたのを覚えています。今となっては失礼なことをしました。結果的にはやってよかったですね。原氏:私たちも、国土が狭い日本なら直接会えるから、ウェビナーの必要はないんじゃないかと思ってはいました。ただ、やってみるとけっこう人が集まりました。やはり研究室からアクセスできる点や出張せずにオフィスからアクセスできる点はよかったですね。2019年に私が中国に異動になるのですが、その年の末から新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。中止になった展示会への出展の代わりにウェビナーを実施する方向に舵を切ったのが、マーケティングとしては結果的にうまくいったと思います。垣内:先にウェビナーを始めていてよかったですね。原氏:そうですね。事前にウェビナーのコンテンツを揃えていて、こうやって集客してというスキームを作ってあったので、比較的スムーズにできたと思います。2021年には、中国市場にローカライズするために、Tech Web中国版の名前を「R課堂」に変え、つくりにも独自感が出るように現地のメンバーが主体となって作ることにしました。ベースのコンテンツは一緒なのですが、翻訳した後に中国版独自の原稿も加えて、今に至ります。営業に関しても、デジタルマーケティングを営業活動に浸透させていくためにSalesforceへの名刺データの取り込みを行うようになりました。2022年には、日本でいうLINEのような中国のSNS「WeChat」に中国独自のMAツールを連携させながら、中国でのデジタルマーケティングを、Marketoの運用と並行してやっていくという取り組みを始めています。垣内:こうして約10年の変遷を見ていくと、当初に比べて、マーケティングとして実施すべきことはすごく増えたのではないでしょうか。次に、現在のマーケティング・コミュニケーション部の役割について少し伺えますか?原氏:コーポレートブランディングの部署は別にありまして、そちらでは企業広告やCMを担当し、私たちマーケティング・コミュニケーション部は、より「売り」に近い活動をしています。ターゲットは顧客のエンジニアです。技術のブランディング、製品や技術に関する詳細認知の向上から始まり、展示会への出展やセミナー・ウェビナーの開催でリードを獲得した後、メールマガジンやターゲティングメール配信などの施策を通して、リードを育成していきます。ホットリードになった段階で、営業やインサイドセールス部門へ送客します。また、実際に訪問しての客先展示会のほか、バーチャル技術交流展示会を開催するといった販促支援活動をしております。その後に案件化となりますが、そこはSalesforceと連携しています。垣内:バーチャルの展示会は頻繁にされていますよね。原氏:そうですね、月に2回以上開催しています。昔はリアルで開催していましたが、コロナ禍で訪問できない状態になったので、バーチャル技術交流展示会を企画したという経緯があります。垣内:どんなチーム構成になっているのでしょうか?原氏:この図のレイヤーごとに、計6つのグループがあります。技術ブランディングや広告を実施するチーム、リード獲得を主な目的としてイベントを開催するチーム、リード育成のためのWeb専門のチーム、Webコンテンツを作成するチーム、ホットリードを生み出すためのチーム、ホットリードになってから営業をサポートするチームに分かれています。垣内:やはり今、営業に対するサポートは手厚くされていますね。昔はありませんでしたね、そういったチームは。原氏:なかったですね。営業部門から異動してきてもらったり、デジタルマ ーケティングに興味を持った社員がうちの部署に異動してきたりすることもありました。そのようにしてマーケティング・コミュニケーション部と営業の融合が始まったわけですね。レベニューモデルの実践垣内:本格的に御社のレベニューモデルを構築したのは2018年、これはSalesforceが導入されたタイミングですね。そこからいろいろなレベニューモデルを構築してきましたが、現在のレベニューモデルについて伺えますか。原氏:図の左側から見ていきます。まず集客してきたリードに対し、イベントであればサンキューメールをお送りし、クリックされればタギングとなって、行動追跡が開始されます。そこからスコアをためていき、行動のスコアが300点を超えるとMQL(ホットリード)になり、送客となります。直販の営業が存在する場合は営業に直接送客されますし、規模にもよりますが、まずプレマーケティング(インサイドセールス) でファーストコンタクトを取る場合もあります。垣内:既存のお客様には基本的にフィールドセールスで対応するという感じですね。原氏:はい。コンタクト後に案件があれば、そのまま案件化という形でSalesforceに取り込まれていきます。案件なしの場合はリサイクルもしくはノーフォローという形になります。また送客でフォローがなかった場合も、90日間経過すると自動的にまたMALに戻るというプログラムを組んでいます。垣内:営業に対応をお願いしても、なかなか対応できないときもあるのでは?原氏:すぐ対応する方と、しない方がいますね。また、ユーザー側で90日間アクティビティがない場合も、リセットという形で、再度1からスコアリングを行います。それから「激熱リード」と書いていますが、ここはスコアリングとは別で、特定の活動を30日間に3回行うといった条件でホットになると送客します。ホットリードは90日サイクルですが、それよりも案件化率が高いので、激熱リードと呼んでいます。垣内:スコアリングについては、私たちも当初はお手伝いさせてもらっていましたが、Marketoを導入した2015年はノウハウが足りなくて、とにかくいろいろなページ、いろいろな活動に対してスコアリングを付与していました。その結果、「雑味」が増えて本当の選定者が見えなくなる傾向がありました。原さんも、ドイツで実際にツールを触りながら、そのように思われていたのではないですか?原氏:そうですね。そのためドイツではドイツ用のスコアリングをやっていこうということで、こうしたら何点、こうしたら何点と細かく組んでいきましたが、実際ホットリードになった人がどんな人かというと、おっしゃる通り雑味だらけでした。例えば、まだ勉強中の方がTech Webの基礎知識のページばかり見たり、学生さんがエレクトロニクス豆知識のページばかり見たり。それでホットリードになっても、当然送客はできません。そういった問題が初期の頃はたくさんありましたね。垣内:現在のスコアリングの中身も少し触れていただけますか。原氏:図にも出ていますが、製品の選定に影響のある行動だけをトラッキングしてスコアを付与しています。比重としては、1点にしているものもあれば、30点つけているものもあります。この辺りは情報収集を行って選定することによって、閾値は300点としています。ただ、先ほど申し上げた激熱リードの場合は、この活動を3回30日以内にしたらすぐに案件化するだろうと。垣内:激熱リードの方には300点つけている感じですか?原氏:意外とついています。それはスコアリングがよかったかなということになります。ただ、余分なホットリードを排除することはできますので、激熱じゃないリードでスコアだけがちょこちょこたまっていくものを省く無駄作業は少なくなったと思います。ついていない方でも、「ホットリードでは遅かった」という取りこぼしを防ぐのに役立ちます。垣内:製品の選定に影響のある行動をチョイスするのは難しかったのでは?原氏:そこに関しては、分析のメンバーもいろいろ試しながらやりました。重回帰分析みたいなことをしながら、この施策はこれぐらいの確度を上げるのに貢献するなというようなことから仮説を立ててやってみて、案件化されたところから積み上げていきました。垣内:MQLを出して、その後営業にアプローチしてもらって案件化した割合が数字として出てきていますね。原氏:ホットリードのうち50%程度が案件ありで、20%程度が新規案件だということがわかりました。営業としては新規案件の発掘が課題でしょうから、そこに対してマーケティングが貢献できることを見える化できたのは非常によかったと思います。垣内:当社のお客様の例を見ても、新規案件20%はかなり高い数字ではないかなと思っています。これはスコアや行動を追求した結果でしょうか。原氏:そうですね。まあ営業に対してしつこく「フィードバックをお願いします」とは言いましたね。フィードバックがちゃんとされていないと、何回でも「ハズレ」のホットリードはきますから。お互いのメリットをちゃんと伝える必要がありますね。グローバルマーケティングの取り組み垣内:ここからは、原さんは海外赴任が長かったということで、グローバルのお話を伺っていきます。原氏:海外赴任の前半4年半がドイツで、後半の4年半が中国でした。まず英語圏のベースとしてのコンテンツを作っていくにあたってヨーロッパは重要ということで、2014年にドイツに赴任しました。そこからデジタルマーケティングだけではなくて、マーケティング・コミュニケーションそのものを作り上げていこうと。私が次の赴任場所に異動する頃には、現地が自走できる体制を作ることをミッションにやっていきました。垣内:当時ヨーロッパではまだ何もやれてなかったと思いますが、展示会ぐらいはやっていましたかね。原氏:展示会はやっていましたが、マーケティング・コミュニケーションの専属担当が一人しかいなくて、新しいことをやろうとしてもそもそもリソースがなかったです。日本とは物理的な距離も文化的な壁もありますので、まずは赴任して、それから現地の採用を増やしたりして、体制を確立するという感じでした。デジタルマーケティングで言うと、Marketoの導入はほぼ日本と同じペースで進めようとしていましたが、2018年に施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)によって、それまでに集めてきたリードも同意がないと使えないことになり、体制をガラッと変えなければならなくなりました。そこで施行前に、個人情報保護のポリシーをどうするかを顧問弁護士と話し合ったり、ドイツのメディアにこれからどうするつもりなのかを詳しく聞いて回ったりしました。メディアもここまでならいけるだろうという落としどころを探しているところだったので、知恵を借りながら対応しました。例えば同意を取るために、展示会であれば顧客情報を入力するシートに「メールマガジンの配信に同意する」というチェック欄を作ったりしました。そのように防衛できる体制を作ってから、Marketoの設定も含めて全部見直して、改めてMAの利用を始めたという形ですね。当時はヨーロッパでもそこまで詳しい人間がたくさんいるわけじゃなかったので、現地のマーケティング会社をブレーンとして活用しながら、少しずつ組み上げていきました。垣内:なかなかレアな出来事だと思います。現在もヨーロッパでMarketoを使われていて、現地で対応されていますが、実際のところ、この4年間で少しずつできてきたと感じていますか?原氏:最初の頃はテンプレートすらないですよね。毎月メール配信するだけで必死です。スコアリングはとりあえず見るけど、ホットリードも出てきたら営業にこんなのがあるよ、ホットリードってこういうものだよって教えるところからのスタートでした。でもちゃんと説明すると、このお客さんが、ここの拠点にいるんだといった 新しい発見があったりして、だんだん味方になってくれました。垣内:中国の話も伺えますか?原氏::019年に中国に赴任した当初は、サイバーセキュリティ法の話が出てきたので、Marketoに入れたリードも、全部一旦ストップしました。ただ、カチッとした正解は見えない状態だったので、他社の状況を見ながら、ここまでなら大丈夫だろうというところをまず見つけ出すことにして。結局Marketoに関しては、2019年に一度リードをインポートし直して利用を再開しました。垣内:Marketoでできるという根拠はあったんですか?原氏:そこは、他社がどうやっているか、探り探りで、ダメって言われたときにいつでもシャットアウトできるようにして、御社にもスタンバイした上で再開しました。ちょっと勇気が要りますが、やらないと進まないので、仕方ないですよね。垣内:なるほど。中国ではデジタルマーケティングは必須であると?原氏:そうですね。他の国よりもリードを取りやすいと思います。当時も、質はさまざまとはいえ、8万から10万ほどのリードの獲得ができていました。その中から少しでも案件が出れば、BtoBマーケティングでは一つの案件の価値は高い。そこで、勝算があるんじゃないかと考え、再開した経緯があります。垣内:中国経済圏となると、WeChatの存在が大きいですよね。原氏:現地でも「Marketoはアメリカのツールだからどうだろう」というような声はありました。現地のメンバーとは、便利なツールであれば、絶対に中国にもWeChat と連携しやすいMarketoのようなツールが存在するはずだという話をずっとしていました。そこで、中国人向けのマーケティングセミナーに行くなど、時間がかかりましたがいろいろ調査しました。垣内:諦めずに探されたのは、それだけWeChatの重要性が高かったからですか?原氏:中国はEメールの文化じゃないですし、ノートパソコンよりスマートフォンが先に発達したエリアですから、スマホなしでは生きていけません。そうなるとWeChatで何かするのがBtoBマーケティングにも有効だということは、皆がわかっていました。結局、探し始めてから3ヶ月ぐらいでMarketoと似たツールが見つかりました。調べてみると、やはりMarketoと同じくらいの時期にできていたんですね。導入している会社もあるとわかったので、じゃあすぐやろうと、導入を進めていきました。垣内:このツールに関しては、WeChatとの連携もけっこうスムーズにできましたか?原氏:いえ、狙い通りの仕組みとして構築するには2年近くかかりました。ただ、いったん入れてしまうとホットリードになる割合、スピードはMarketoより速いですね。垣内:その経済圏に合わせてシステムを選定していくのは重要ですね。原氏:そうですね。今MarketoとWeChat用のMAツールを同時に走らせていますが、もしかしたらWeChat用だけになる可能性もありますね。垣内:あとTech Webですね。こちらはもともと簡体、繁体という形で中国向けにも用意していましたが、それを止めてローカライズしていかれた経緯についても伺えますか?原氏:当初はTech Webとそのままアルファベットで書いていたのですが、中国には全く別の同名サイトが存在するので、これはまずいとなったのが発端です。SEO対策的にも、中国ではBaidu(中国の検索エンジン)などが使われていて、中国語での情報が満載で、中国人向けの表現になっていることが重要です。そうなると、コンテンツはもちろん、システムそのものも、中国にフィットしたものを作るほうが集客力もサイトパワーも上がるだろうと、現地の会社の協力を得て実際に作ってみました。結果、やはりローカライズする前と後ではだいぶ変わって、月によっては倍ぐらい増えましたね。垣内:現地に合わせて考えていかれたということですね。原氏:結局、日本からリモートでやっていても、現地のメンバーと意思のフェーズが合わないという事態が生じてしまうので、極力現地に行って直接コミュニケーションを取る必要があります。現地のメンバーも腹落ちすれば動けますし、動くことによって結果も出てくると思います。垣内:海外で何とかマーケティングを成功させたいという企業にアドバイスするなら、やはり「現地に行け」ということですか?原氏:行けるのであればぜひ。何回出張してもいいのであれば、回数が多い方がいいと思います。もしくは現地からスタッフに来てもらって、本社ではこんなことを考えていると伝えて、常に現地と本社の両者が納得いくように進めることが大事だと思っています。WeChatを使ったことがない人は絶対に使ってみてほしいです。垣内:現地で使ってみないといけませんね。実際に原さんが現地に行かれても、ずっとはいられませんから、後任の育成も必要ですね。原氏:そうですね。ドイツでも中国でも、私の後任は現地の人にやってもらっています。ただ、しばらくの間はそれで回るのですが、ずれが出てきたなと思ったら、その補正が必要になります。垣内:年に何回か、グローバルで集まる機会はあったりするんですか?原氏:コロナ禍の前はありましたね。私が帰任してからはできていませんが、後々はそうしたいなと思っています。マーケティングの未来と期待垣内:最後に、マーケティングの未来や今後についてどんな期待をされているかを教えていただけますか?原氏:個人の見解になりますが、マーケティングでは、もちろんBtoBマーケティングに関しても、デジタル化はもう避けて通れないと思います。その中で、営業生産性を上げなければなりません。営業になるべくハズレの活動をさせないようにしたり、データのインプットによってより案件を増やしたりすることが、デジタルマーケティングの活用によって可能になると思っています。垣内:先ほど50%、20%という数字が出てきましたが、そういう意味では20%をいかに上げるかというところが重要なミッションですね。原氏:そうですね、ひたすらテレアポをしても少ししか取れないところが、デジタルマーケティングを活用したら2~3割でいける、いずれは5割ぐらいでいけるとなれば、限られた時間とリソースで成果を上げることができます。それができるようにならないと、これから淘汰される企業もあるかもしれません。垣内:AIの活用も重要になってきますね。原氏:今までは取れなかったデータを収集して分析するのはもちろん、分析をもとに次の予測を立てたりすることは、AIの得意分野の一つだと思います。そのほか、コンテンツ作りにおいても、すでに画像を作成できる生成AIが出てきているわけですから、例えばそれをデザイナーが右腕として活用していくことによって、アウトプットまでの時間や工数を減らすことができます。垣内:予測と効率化はAIに期待できる部分ですが、予測のためのデータの収集という意味では、営業の成功や失敗のデータがほしいですね。原氏:「こうだと成功」「こうだと失敗」というのはもらわないといけませんね。先に成功例を収集できれば、勝ちパターンがわかるので、まず成功データがほしいですね。失敗の場合は後々でいいのですが、こうなったらダメだという失敗例があれば、そのフラグが立つところを排除することはできるかもしれません。垣内:いずれにしても営業によるデータ入力が重要になってくるのかなと思います。他の企業でも、営業がなかなかデータを入れないという苦労があるようです。ローム様ではどうされていますか?原氏:もうしつこく働きかけるしかないですよ。トップダウンの指示も必要ですし、現場でもサポートをして、マーケティングを理解してツールを使いこなせる人の母数を増やしていくしかありません。垣内:具体的にはどのような活動をされていますか?原氏:まずMicrosoft Teams内にコミュニティを作って、成功体験を共有したり、テンプレートを配布したりしています。例えばターゲティングメールのテンプレートであれば、営業の名前とお客様の名前を入れれば、メールを送ることができるようになっています。そういった草の根的な動きをしつつ、トップには定期的に結果をまとめて報告するといった活動をしています。垣内:変化は出てきましたか?原氏:以前は案件化されてもなぜうまくいったのかがわからない状態でしたが、リードソースが何かがわかるようになりました。そうすると、自然と、案件の中でこのデジタルマーケティングが関わってきたと見えてくるので、そこから信頼を積み重ねていくと。垣内:先ほどの50%、20%という数字は、それこそ案件にマーケティングの活動が関わっているという表れですよね。御社のお客様とデジタルマーケティングの相関性はけっこう高いんでしょうね。原氏:そうですね。お客様の中には、毎回営業から話を聞きたくない、今は問い合わせたくないっていう方もおられるかもしれません。お互いにそういうストレスをなくせるという面もありますね。垣内:そこまでいくと本当にやらない理由はないという感じになりますね。そういう意味では、マーケティングの未来は明るいと?原氏:明るいです。垣内:楽しみですね。10年やってきて、データもかなりたまってきていると思います。原氏:伸びしろだらけですね。ただ、やはりAIにしてもそうですけど、使いこなすためには人間も学びながら成長しなきゃいけないというのはあります。垣内:そうですね。原さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。