セールス・マーケティングDXを推進するための設計の基礎

BtoB企業の購買において、検討を進める際にWebサイトから情報収集を行うことは一般的になっています。
顧客接点がデジタル化しているということは、Webサイトのどのページを閲覧しているのかなどの、顧客行動を察知することが重要です。

また、マーケティング活動を行う上で営業との連携は欠かせません。
顧客情報や顧客行動などのマーケティングからのデータの共有だけではなく、営業からの営業活動のデータも連携する必要があります。

より効率的に業務を行い、売上を最大化させるために、DXの推進が重要になりつつあります。本記事ではDX推進の必要性、営業連携のポイントについてご紹介します。


この記事の著者

垣内 良太
代表取締役社長
垣内 良太

セールス・マーケティングDXとは?

BtoB企業におけるマーケティングの機能とは、販売チャネルに対して、良質なリードを創出し、マーケティング由来から商談パイプラインの上積みに貢献することです。

セールス・マーケティングDXとはさまざまなデジタルデータを活用し、販売の効率化と販売の促進を支援するための変革を指します。

なぜDX推進が必要なのか?

BtoB企業において、Webサイトで情報収集する流れは10年以上も前には定着化しています。加えて、新型コロナウイルスの影響を受けて、ますます重要な情報収集チャネルだと感じている方も多いのではないでしょうか。

当社が独自で調査したバイイングプロセス調査レポートによると、BtoB企業の購買ではWebサイトと営業からの情報収集が多いという結果でした。

さらには、情報収集から購買までのプロセスの中で、初期段階においてはWebサイトを主に利用しており、後半段階では、営業チャネルへと変化していることが分かりました。

つまり、購買のスタートからゴールまですべてのプロセスをカバーするためには、Webサイトと営業の接点が重要です。そのためには、お客様情報や営業情報をデジタルに集約し、各プロセスに最適な活動を行う必要があります。

これらの情報を収集し、分析することで、無駄な活動を省き、より効率的な活動が可能となります。これこそがDX推進の目的といえるでしょう。

顧客行動の集め方

先ほどWebサイトからの情報収集が多いとお伝えしましたが、これらの情報はどのように集めれば良いのでしょうか?

セールス・マーケティングDXという観点では、お客様の個人情報や行動データなどさまざまなデータを、そのお客様個人に紐づけていくことが重要です。

これまでは、展示会の来場者リスト、セミナーの申込リストというように、施策やチャネルごとにデータが存在しているケースが多かったことでしょう。この管理では、各施策や各チャネルの評価は可能ですが、一人ひとりの行動が把握しにくい状況でした。

しかし、行動データと人物が紐づくことで、お客様がどのようなマーケティング接点を経て、営業活動につながり、商談化し、受注に至ったのかを明確にすることができます。

セールス・マーケティングの接点

ここでマーケティングの接点とセールスの接点の種別を整理してみると、以下のようになります。

マーケティング接点と営業接点の種別

初めてリード情報を獲得した接点のことを、ファーストタッチと呼びます。リードソースと呼ぶこともあります。一方で、営業へ連携されて商談化へと発展した場合は、その営業へ連携された接点のことをラストタッチと呼びます。
もちろん、ラストタッチに至るまでにもさまざまな接点があり、それらを総称してマルチタッチと呼びます。

施策ごとの商談結果の図

このタッチポイントの管理を手作業で行うには、膨大な時間がかかるため、システムを使用することが有益です。

これらの接点の中には、Webサイトのページ閲覧の情報(Cookie情報)も含まれるため、非常に膨大なデータの蓄積が必要となります。この膨大なデータを管理するツールこそが、マーケティングオートメーション(MA)です。

Cookie情報を取得することで、Webサイトの閲覧情報を追うことができます。
それ以外にも、メールマガジンの開封やクリック、ウェビナーの申込情報などのオンラインでの行動のデータを取得することができます。オフライン施策に関しても、来場者リストのインポートなどMAに情報を取り込むことで、紐づけが可能です。

▼見込み客のWeb行動を追う仕組みとは?マーケティングオートメーションでCookie(クッキー)情報を獲得する仕組みを解説


一方、営業側の接点管理は、担当営業が独自で管理していく側面が強い傾向があります。例えば、お客様との対話やメールでのやりとり、案件化された際の案件情報など、営業活動に関する接点は営業担当者が管理していく必要があります。

1人のお客様がどのような営業活動を経て商談化しているのか、これらの情報もかなり膨大なデータを蓄積していくこととなります。この営業側のデータを管理するシステムのことを、セールスフォースオートメーション(SFA)といいます。

▼マーケティングオートメーション(MA)とセールスフォースオートメーション(SFA)それぞれの定義と役割、違いとは?


MAとSFAを連携すると、マーケティングとセールスの情報を紐づけることができ、非常に有益なデータとなります。
例えば、マーケティング活動によって創出したリードに対して、営業がアプローチすると想定します。

営業側は、このリードがどのような行動をとっていて、どの接点をきっかけに営業にパスされたのか、などの顧客行動を把握することができます。一方でマーケティング側も、アプローチした過程や結果をMAでも確認することができ、営業活動や商談の結果を基に、有効な施策を検討することが可能となります。

MAとSFAの連携イメージ

マーケティングから営業へリードをパスするポイント

MAとSFAを連携したら、すべてのリードに対して営業活動を行うわけではありません。マーケティング活動を通して、購買意欲が高まったと判断できるリードを選別して営業にパスする必要があります。

以下に、リードを営業にパスするためのポイントを解説します。

有効リードの定義を決める

有効リードとは、マーケティング活動によって生成されたリードの中で、営業にパスすると判断したリードのことを指します。製品情報に関心をもっている、購入の準備をしていると見込まれる、など将来的に製品やサービスの購入が見込まれているリードです。

有効リードの定義はマーケティングとセールスの双方とも合意をした上で決定する必要があります。合意がとれていないと、「営業が全く対応してくれない」「マーケティングからパスされたリードが多くて手が回らない」など不満が溜まってきてしまいます。

双方で定義が確認できていれば、パスされた際のフォロー体制を整備しておいたり、有効リードを創出するためのマーケティング活動を検討したり、対策をとることが可能となります。

レベニューサイクルモデルの構築

有効リードを定義するだけではなく、リードが購買に至るまでのステップを明確にする必要があります。それを検討する最初のステップが、レベニューサイクルモデルの構築です。

レベニューサイクルモデルとは、お客様の状態を表すものであり、お客様一人ひとりに対してマーケティング部門なのか、インサイドセールスや営業部門なのか、どの部門が対応すべきかを明確に定義したものです。

レベニューモデルのイメージ図

レベニューサイクルモデルは、SiriusDecisions社(現Forrester社)による「デマンドウォーターフォール」やSalesforce社の「The Model」が有名です。各詳細は、以下よりご覧ください。

デマンドウォーターフォールはBtoB企業向けの進化系ファネル

The Modelとは?定義から導入のポイントまで徹底解説

マーケティングから営業へと引き継がれる接続ポイントのことを、MQL(Marketing Qualified Lead)と呼びます。ホットリード、有望見込み客とも呼ばれます。マーケティングが選別したリードであることから、このリードは営業がアプローチすべき対象のリードであることが分かります。

MQLの定義を決める

次に、MQLの定義を決める必要があります。
お客様との接点をMAで管理することができれば、それらの行動をスコア化していくことができます。例えば、Webサイトの閲覧は1点、資料ダウンロードのフォーム登録は10点、のようにスコアのルールを定義します。このスコアの合計値が上限を超えたタイミングでMQLとする、ということが可能となります。

営業がアプローチしたい行動とは何か?を明確にすれば、重要な指標が自ずと見えてきます。それぞれの行動に対する重み付けがスコアを設定する上で重要となります。

しかし、BtoBの場合は、アプローチすべき行動であれば、全てのリードが有効であるとは限りません。例えば、製品が非常に高価であり、今までのお客様の特性からもある程度の規模の製造業に限定される場合、製造業以外のリードは有効ではない可能性が高まります。

つまり、行動以外の属性情報も重要となるケースがあるため、行動スコアだけではなく属性に対してもスコアが必要となります。属性スコアは、業種や売上高などの企業情報、役職や部門など個人の情報に分類できます。
行動属性スコアと企業・人物属性スコアの掛け合わせにより、より精度の高いMQLの創出が可能となります。

クロススコアリングの設計例

営業との連携

MQLを多く創出しても営業が対応してくれない、というお悩みをもっているマーケティング担当者は多いです。特に、従来の売上の大半を営業で創出してきた大手BtoB企業にはよくある話です。
セールス・マーケティングDXが進まない背景には、この事象が当てはまることが多い印象です。

営業との連携を推進していくためには、戦略、組織、マインドの変革が求められます。

戦略の変革

まず戦略を考える上で、マーケティング要素を取り入れていくことが重要です。
営業がどこまで対応し、マーケティングがどこを補完するのかを明確にする必要があります。その辺りが一切考慮されていない戦略が多く、マーケティングに対してコミットを求めていない点に違和感を覚えます。

売上貢献に対して、マーケティングが必要な要素を最初から戦略に組み込んでおけば、営業もマーケティングに頼らざるを得ません。マーケティング活動が売上目標に関わってくるためです。

「何のためにマーケティング活動をやらないといけないのか?」
今一度、マーケティングの役割を確認し、戦略を検討しましょう。

組織の変革

マーケティングと営業が連携する上で、組織づくりは欠かせません。両部門の連携がないと成り立たない組織に変える必要があります。

営業リソースが逼迫している状態であれば、営業業務の棚卸しが必要です。リソース不足を解消するための分業も必須となります。

例えば、新規取引先は新規専任の営業部隊が対応し、年間100万円以下のお客様は営業支援部隊が対応し、マーケティング状況に応じて営業へとパスする、という分業体制にします。

また、インサイドセールスチームを編成することも1つの手法です。
MQLの精度をより高めるために、マーケティングからインサイドセールスへパスし、案件化してから営業へ引き渡すことが可能となります。

SDRやBDRとは?インサイドセールス成功のポイントとともに解説


営業の役割は何か、力を入れるべき活動は何か、改めて考え、そこに注力できるような組織を目指しましょう。

マインドの変革

最後にマインドの変革です。従来の営業文化において、売上至上主義であることが多いのが現状です。結果がすべてなため、営業プロセスを鑑みないケースが多いです。

そのため、マーケティングのリードに対してアプローチしなくても、売り上げが達成したから問題ないという風潮が見受けられます。

当社のお客様で営業との連携が成功している会社は、連携時の取り決めを徹底しています。例えば、MQLが1,000件出た場合、1,000件すべて確実に営業が対応します。

マーケティングから引き渡されたリードは購入に繋がりにくい、などの先入観を持たず、とにかく対応するというマインドを持つことが大切です。
この徹底により、本当に有効なMQLは何かが明確になってきます。

マインドを変革させるには、まずは上層部から取り組みましょう。上層部の意識改革を高めることで、社員全体にも広がっていくでしょう。

営業のフィードバックにより精度を高める

マーケティングの変革を促すためには、アプローチ状況や商談情報などの営業データは必須です。BtoBの場合、いくらマーケティングが、「このリードは有効です」と言ったところで、実際の成果がどうだったのかが明確にならない限り、リードの有効性を判断できないためです。

「マーケティング活動は売上にどれほど貢献しているのか?」という問いに回答できないマーケティング担当者が多いのではないでしょうか。
回答できない原因は、営業からのフィードバックがないために起こります。

営業からのフィードバックがある場合、どのマーケティング活動が効果的なのか、営業がどのタイミングでアプローチすると良いのか、など判断ができます。
その他にも、営業担当者との相性も分かります。例えば、営業Aさんはシステム部門の方からの受注が多いが、営業Bさんは上層部の方からの受注が多い、などそれぞれの営業担当者の強みも見えてきます。

これらのことが明確になれば、マーケティングから営業への連携方法を変えたり、MQLの定義を見直したり、より効率的な連携が可能になります。

全てはデータに基づいた結果により変革を促す考え方がDXです。そのためにはデータ収集が非常に重要な要素であることが分かります。

特に、営業のデータは重要ですが、結果重視の傾向が強いため、データ入力や登録作業が意味のないもの、無駄だと思われることが多いです。

まずは営業部門にデータ入力を徹底してもらうことが重要です。そのためには、上層部がデータの重要性を理解し、営業全体に入力を促していく必要があります。

セールス・マーケティングDXを推進するために

マーケティング部門に関しては、MAで正確なマーケティングデータを収集し、営業へと連携する仕組みや指標をつくりましょう。

そして営業部門に関しては、データマネジメントの重要性を理解し、マーケティング部門との取り決めを遂行しましょう。

特にマネジメント層にはSFAによる管理を徹底させ、フィードバックができていない営業員に対して正しく指導できる体制が求められます。

営業によるフィードバックを受けてマーケティング施策のPDCAを繰り返すことで、マーケティング精度を高めることができます。
DXの取り組みは、営業もマーケティングも効率的な活動へつながることでしょう。


この記事の著者

垣内 良太
代表取締役社長
垣内 良太

1974年生まれ。大学卒業後、1996年に中堅印刷会社に入社し新規営業開拓に専念。2002年より実父が創業した現会社に入社。印刷事業を中心に、展示会やWebなどのマーケティング施策の企画、実行支援に従事。2009年よりBtoBマーケティングサービスを展開。2013年5月にBtoBマーケティングサービス事業に専念するためワンマーケティング株式会社に社名変更。2018年に同社代表取締役に就任。以来、数多くの大手BtoB企業のマーケテイングコンサルティングに従事。MA、SFA導入等多くのプロジェクトに参画した経験を持つ。

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