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成果につなげるデータ分析活用の本質 第3回:「データ分析」と「データ整理」の違い

仮説アプローチの重要性

前回記事の内容を踏まえた上で次のステップに進むためには、自ら打ち立てた課題や目的を漠然としたまま放置せず、その中身を具体的に掘り下げ、問題の核心に近づこうとすることが必要です。

そのためには、

“どんなデータを使い”
“どう見ればよいか”

を定めなくてはなりません。

これもデータ分析の目的や課題の設定同様、「データをいじり倒した結果」どこかで見つけられるものではありません。分析者が「仮説」として考え抜かなければならない重要なポイントです。

一例を挙げると、「この半年で我が部門の総売上額が悪化してきた」という課題があったとします。総売上額の悪化をグラフ化して眺めていても、一向に具体化を進めることはできませんよね。

具体化のために次に考えるべきは、「課題の分解」です。
総売上額という大きな課題を分解し、より細かい(具体的な)課題に落とし込むことで、問題をより具体化させるのです。

仮説として「総売上額をどのようなデータ(指標)に分解すれば、この問題を一歩具体的にできるだろうか」と考えます。

例えば、扱っている各商品の売上額に分解し、それぞれの悪化度合いを比較評価することがよくある例の一つです(下図)。

ただし、このような単純な総売上額の問題であっても、その分解の仕方(切り口)は、「商品軸」だけとは限りません。エリア別や、曜日別、顧客属性別など、無数の切り口が考えられます。
“仮説”としてその切り口(候補)を考えることが、「次に必要なデータは何か」の答えになります。

このように、仮説としてどのデータを使うのか、どうやって見るのかを考えることを「仮説アプローチ」と私は呼んでいます。データ分析を実務で活用するにあたって、極めて大事なポイントとして、研修などでも特に力を入れてお話している部分です。統計理論や分析手法を学んでも、結局実務で使えない、使われない原因の多くがここにあります。

ここまでお話すると、「どの仮説が正しいのですか?」や「どうやって正しい切り口を見つけることができるのですか?」と聞く人がいます。
ビジネスの中での問題解決や提案は、アカデミック分野での論文作成や学校のテストと違って、”唯一絶対の正解“があるわけではありません。関係者が納得するような「納得解」を、データという客観的な情報で創り上げる、と捉えるべきでしょう。
となれば「正しい仮説か否か」という問いそのものに意味がないことが分かります。

少なくとも、次のポイントを意識しながら、100点を目指さず(100点など存在しないし、確かめられないので)、自ら仮説を立ててみてください。場数を踏めば踏むほどそのスキルは上達します。

1) 抜け漏れができるだけないように、網羅する思考の範囲を広く
2) 自分の主観や解釈を必要以上に入れ過ぎないように(仮説時点で大きく論理破たんしていると、その先かなり苦労します)

仮説が先か、データが先か

更によくある質問が「データからの情報に基づいて仮説を立てるのはどうか」というものです。

ここまでお読み頂いた方はこの質問に対する答えがもうお分かりかと思いますが、「どのデータを使うのか」を考える時に、目の前のデータによってそれを決める、なんてことは理屈が成り立ちません。

仮に何の目的や仮説もなく、目の前のいつも使っているデータに手を付けてグラフや表にしたときに“たまたま”見つけた発見に基づいて仮説を作るとどうなるでしょうか?

きっと何かしらの分析作業を進めることはできると思います。ところが、その分析の対象や幅は、最初に決めた仮説に完全に縛られます。その仮説が、“たまたま自分の職場にあった”もので、その中から“たまたま見つけた”ものだったとすれば、その結果にどれだけの客観性と論理性があるでしょうか。

通常、人はデータとにらめっこしながら作業モードに入ると、こういった抽象的、概念的な思考は完全にストップし、作業の中から何かを発見しようと、あれこれ”手段“を考えることだけに猛進します。
そうなると、もう後戻りできません。

つまり、プロセスの入り口で思考も分析範囲もロックされてしまうのです。

これでは、せっかく客観的な情報と呼べるデータも台無しですね。

ここで、”実務でデータを扱う“には2通りのカテゴリーがあることに触れておきたいと思います。

“データをイジる”ことは誰でもすぐにできます。しかし、目的や課題も明確でなく、何の仮説もないまま得られる情報とは一体何でしょう?

それは、生データ(数字の羅列)を眺めていてもよく分からないため、グラフや表という形に加工して得られるサマリー、つまり分かりやすくまとめた結果です。私はこの作業カテゴリーを「データ整理」と呼んでいます。

正にデータを分かりやすく整理・加工したに過ぎないからです。もちろん組織の中で、データ整理が必要な場面は多々あります。ところがこれだけでは、問題の原因も結論の根拠も直接的には示すことができず、「いまいちデータを使いきれていない」という評価や感想に終止してしまいます。

一方で、分析作業を始める前にしっかりとその目的や課題を設定し、考え得る広い範囲の仮説の下に、必要なデータを広く集めて掘り下げる作業こそ「データ分析」と呼ぶにふさわしいと考えています。

皆さんが普段やっているデータの作業はどちらでしょうか?そして仕事の中でのゴールに到達できるのはどちらの作業でしょうか?

”方策君”になっていないか

ここまで私がお伝えしてきたことは、「データを活用するには、データ単独または方法論で何とかなるのではなく、あくまで論理的な思考のベースの上にデータを乗せることで、初めて筋の通った結論を導くことができる」という大事な点です。

その点を踏まえた上で、データ分析活用の有無に限らず、多くの職場に共通するであろう問題点を最後に紹介します。私が「方策君」と呼んでいる問題です。

データや情報を用いて、実績確認・現状把握など「データ整理」をします。多くのグラフや表に囲まれて、「自分でも大したこと言ってないなぁ」などと思いながらも渋々プレゼンをした経験はないでしょうか。
その時に犯しているであろう問題が、「要因」や「根拠」の特定を飛ばし、いきなり方策の検討に飛んでいることなのです。

例えば、「商品Aの売上が落ちている」ことをデータで突き止めたとしましょう(図中「現状把握」「問題特定」の部分)。次にこのようなことを考えていませんか?

・商品Aに特化したプロモーションにもっと力を入れよう!
・商品Aのネット上の紹介文をもっと奇抜なものに差し替えよう!
・商品Aを商品Xと組み合わせて売り出すのはどうだろうか?

確かにこれらも”考えて”はいます。でも、”考える“には、このようにアイデアを発想するための”考える“と、論理的に事象を掘り下げる意味での”考える“があります。いずれも必要であるし大切ではあるものの、前者には力を入れる一方で、後者はないがしろにされることが少なくありません。その場合、

「その方策が有効だとなぜ言えるのですか?」
「それは“最適解”と言えるのですか?」
「この問題の根本原因をそれで解決できるのですか?」

といった極めて本質的な質問に全く答えることができないでしょう。

反対に、これらの点を押さえることが結果的に導き出した方策の成功率や実施効率を上げることにつながります。奇抜な面白アイデアの効果や成功率が高い保証はどこにもありません。

実はこれらの要因や根拠をデータで特定するには「データ整理」ではなく、結局「データ分析」が必要となるのです。結果と原因の論理的なつながりのバリエーションを仮説として挙げ、必要なデータを特定して分析をかける。その結果から仮説の是非を確かめて、論理的なストーリーを導き出すのです。それが筋の通った方策案となります。

方策君に「面白いねぇ、そのアイデア!」と言ってくれる人はいても、
「納得した、それに1千万円使っていいよ」と言ってくれる人がなかなかいない理由がそこにあります。
(もし、言ってしまっているとしたら、それはそれで別な重大な問題ですが・・・)

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