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アジャイル型インサイドセールス実践法 ~テレアポから脱却し、SaaS時代に適応したプロセスを構築する~ 【第5回】経験者優遇のギモン~インサイドセールス人材に必要な素養とは

トレーニング次第でインサイドセールス人材は育てられる

「どういう人が、インサイドセールスに向いていますか?」

コンサルティングや講演に行くと、必ずと言っていいほど聞かれる質問です。みなさんは、どのような素養が必要だと思いますか? 電話でのコミュニケーションが得意な人、相手の話を引き出せる人、戦略的に交渉ができる人、美声で発話が明瞭な人……などでしょうか。

確かに今挙げたようなことは、実務でプラスに作用するかもしれません。けれども採用の時点では、必須要件ではないと私は考えます。というのも、インサイドセールスで用いるコミュニケーションは、比較的トレーニングで習得しやすいものだからです。

例えばメール。お客様によって多少の違いはあっても、パイプライン上で同じフェーズにあれば、送る内容は似てくるはずです。ですからメール文面は、共通のひな形を用いれば担当による質のバラつきが抑えられます。もし心配ならば、送付前に育成担当が文面チェックをすればいいだけの話です。

電話のやり取りも、対面営業に比べればパターンは限られます。スクリプトを用いて、自然と話が進むように設計することも可能なはずです。また電話があまり得意でない人でも、慣れることで克服できるものです。

けれども注意点もあります。それは、効果的なトレーニングプログラムを設けることです。

前回の解説で、インサイドセールスの現場には“営業経験の浅い人もできる”という誤解があることを述べました。そしてインターンや新卒の新入社員であっても、説明もそこそこに現場に送り込んでいることが、定着を阻む要因であると指摘しました。
これは本来ならば、「現場に立つだけのスキルが備わっていない」と考えるべきであり、その補填を現場で行うのはおかしいのです。電話口での話し方や説明の仕方、声の出し方や間や呼吸の置き方、リアクションの取り方は、マニュアルを読み合わせただけでは定着するはずがありません。練習が必要なのです。

でも練習メニューを考えて実践することは、難しくはないでしょう。発声練習をする、ロールプレイを繰り返す、会話を録音し育成担当と一緒に振り返る、シミュレーション別にレッスンするなど、さまざまなやり方があるはずです。現場に入ってからも、電話商談の際は育成担当が脇についてフォローする、判断に迷うところがあればいったん電話を切って折り返すなど、いろんなやりようがあります。そうしたトレーニングやケアを雑にしているために、スキルが定着しないのです。けれども育成の手順さえ丁寧に踏むことができれば、未経験者であっても十分に成長を期待できます。

過去の経験はむしろ足かせに⁉

前項で述べたとおり「インサイドセールス人材は育成できる」という前提でいうと、採用に際して特別なスキルや経験を求める必要はないと考えます。むしろ前職でのインサイドセールスの経験、またはフィールドセールスの経験が邪魔をする可能性すらあります。

というのも、日本の企業でインサイドセールスを取り入れているところは、今のところテレアポとほとんど変わらないからです。スクリプトに従い一問一答式に顧客の情報を入手して、商談を設定できたらそれでOKというパターンです。けれどもこれからのインサイドセールスは、これまでお話してきたとおりまったく違うものです。

電話のやり取りひとつとっても、相手の状況や購入意欲に合わせ、こちらの出方もチューニングする必要があるとなると、過去に染みついた電話の癖を修正しなければならない場面が出てくるはずです。またマーケティングやフィールドセールスとの連携というのも、テレアポにはない類の業務です。これらのことから、過去のインサイドセールスの経歴は、期待するほどアドバンテージにならないのではというのが私の考えです。

フィールドセールスの経験が役に立たないのも、同じような理由からです。従来のセールスは、自分でアポイントを取って、顧客情報を自分だけで抱えて、一匹狼でこなすことで数字を確保していた人がほとんどです。ひと言で申し上げれば、アジャイル型のセールスモデルとは真逆のスタイル。アジャイルでは情報共有やメンバーとの連携、機動力がカギを握るのですから、成果を占有できないと気が済まないという人は、はっきり言って向いていません。逆に営業の現場にいたけれども、業務プロセスや成果の属人化に疑問を感じていたという人ならば、アジャイル型組織で経験をいい形で発揮してくれるかもしれません。
ここまでインサイドセールス人材になるのに、特別必要な素養はない、経験は邪魔になる可能性があると述べてきました。けれども読者のみなさんは、「こういう人が向いている」という基準を知りたいというのが本音でしょう。“あえて挙げるなら”というものではありますが、次の図に一覧を用意しましたので参考にしてください。

経験以上に問われるマネジャーのモチベートと変革の力

ここまでの話から、インサイドセールス人材は採用後の育成が重要であることはお分かりいただけたと思います。となると、みなさんは次の疑問にぶつかるはずです。「人や組織を育てるマネジャーは、どこから連れて来ればいいの?」と。

あらかじめ申し上げておきたいのは、マネジャーになる人は、インサイドセールス経験者でなくても構いません。インサイドセールスの知識やスキルよりも、マネジャーとしての資質を持ち合わせていることが重要だと第1回で説明しました。

繰り返しになりますが、アジャイル型組織は周囲との連携がカギになります。また市況やリードの状況は刻々と変わりますから、課題は尽きることはありません。いつもうまくいくとは限らないし、時には衝突も起こるでしょう。成果を上げると同時に、メンバーに仕事に携わる価値や意義を伝え、ハードな局面においても組織への貢献をあきらめない気持ちを培うことができる人こそ、マネジャーにふさわしいといえます。

そしてもうひとつ重要なのが、社内に「インサイドセールス」という組織を定着させることのできる力です。これまでいろんな会社に出向き、インサイドセールスの立ち上げを支援してきましたが、多くの会社が“新しいセールスの仕組み”を取り入れることに苦心しています。既存の枠組みで営業活動を行えていた(成功しているか否かは別として)人にとっては、受け入れ難いところがあるのです。そのため当然ながら、立ち上げ期には組織的な反発も起こり得ます。

しかしだからといって、「うちの会社には合わない」と断念すればいい話ではないでしょう。今後の市場形態を考えれば、インサイドセールスを取り入れない選択肢はないはずですから。また「うちの会社に合うように」とカスタマイズが過ぎると、アジャイル型組織の理想形からはかけ離れたものになり、思うような結果を出せない状況に陥りがちです。さらに上層部の理解が足りないと、組織が機能するまで待ってくれない場合もあります。
ですからマネジャーには、適切な業務プロセスを設計できる緻密さに加え、社内の逆風に屈することなく粘り強く交渉し、組織に変革を起こせる力強さが求められるのです。

日本の組織(特に大企業)は、それぞれが会社特有の枠組みや考え方を持っています。アメリカの企業のように、業界を超えた共通のフレームワークがなかなか存在しません。一方で日本のスタートアップは、歴史が浅く枠組みそのものが確立されていないところがほとんどです。そうした背景も踏まえ、アジャイル型インサイドセールスを取り入れていく必要があり、そこはマネジャーの力量が問われるところです。

ちなみにインサイドセールスチームの立ち上げで、外資系企業の経験者をマネジャーに迎えたものの、思うように進まないというケースを耳にします。それは先に述べたように、日本の企業と外資系企業の“枠組み”の違いがあるから。外資系のやり方をそのまま持ち込んでも、結局うまくいかないのはこのためです。

グローバルインサイト合同会社 代表 水嶋 玲以仁
https://globalinsight-japan.com/

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