■月次報告書のレポート例Webサイトレポートの作成目的レポートは何のために作成するものでしょうか?筆者は大きく分けて2種類のレポートがあると考えています。1つは「定点観測」のためのレポートです。数値を日・週・月単位などで確認しながら、目標に対しての進捗を確認することが主な目的です。数値を定期的に確認しておくことで、急激な変化に早く気付くことも出来ます。例えば前日と比べて大きく訪問者数が下がってしまった。原因はシンプルですぐに修正出来るものだとして、それを翌日に気付くのか、翌月に気付くのかではビジネスに与える影響が大きく変わってきます。あるいは今月のウェブサイトでの売上目標が3,000万円だったとしましょう。月初から1週間経った段階で売上が200万円しかなかったら、売上を上げるためのキャンペーンや施策が必要になるかもしれません。しかし月末に「実は1,5000万売上が足りないのです」と言われても改善施策が間に合わない可能性があります。このように定点観測は「健康診断」を目的として行うことが中心です。健康診断はなるべく定期的にかつ自動的に行う必要があります。そのため作成の手間を最小限におさえる事も重要です。作成頻度によってレポートの作成方法が変わってくるという特徴もあります。こちらについては第2回・第3回の連載で紹介していきます。もう一つのレポートの種類は「改善提案」のためのレポートです。こちらは定期的に作成するものではなく、社内あるいはクライアントのサイトを分析して改善提案を行うためのレポートです。ウェブサイトの強み・弱みなどを元に機会点を発見し、改善策の提案を行います。レポート作成の目的は改善策を実施してもらうことで、ウェブサイトのゴールやKPIに貢献することです。レポート単体では意味をなさず、そこからのアクションとセットで評価されます。そのため改善提案とは別に施策実行時の振り返りレポートを作成することもあります。定点観測のためのレポートが健康診断だとすれば、こちらのレポートは「お医者さんによるお薬の処方」に近いです。問診や診察を通じて問題を発見し、それにあったお薬を処方あるいは治療を行うといった具合です。提案する内容が重要で、それを実際に実行してもらう(治療を受けてもらう)ことも大切です。次回から具体的なレポート設計に入っていきますが、今回はその前に「良いレポートの5つの条件」を紹介いたします。「定点観測」にせよ「改善提案」にせよ良いレポートにはいくつかの共通項があります。良いレポートの条件その1:報告対象者が必要としている内容になっている大前提ではありますが、レポートは誰かに共有し活用してもらうことにあります。なんとなく言われた数値を出すのではなく、そのレポートは誰にどういう目的で提供されるのかによって必要なデータや作り方が変わってきます。報告対象者からの依頼あるいは、報告対象者にヒアリングを行う際には以下の7点は必ず確認しておきましょう。設定されているゴールやKPIゴールやKPIに対して抱えている課題レポート頻度と希望する形式(パワーポイント・エクセル等)レポートの利用対象者レポートを通じて実現したいことレポートの共有方法(メール・印刷・会議体)作成の上、必ず追加してほしい指標や内容は(同業他社など)なお確認の際は「何か課題ありますか?」とか聞いても出てこない可能性があるので、可能であれば本連載を通じて学んだ内容を元にサンプルのレポートや、考えられる課題の一覧などを作成しておくと良いでしょう。つまり明確なビジョンが無い場合は、「ヒアリング」という名称ですが実際には「こちら側からの提案」という風に考えても問題ありません。いずれにせよ、報告対象者が必要としている情報が盛り込まれていない、あるいは必要じゃない情報が大半を占めるということではレポートを活用してもらうのは勿論できませんし、そもそも見てくれなくなってしまうかもしれません。大切な事なので、最初に整理してからレポート作成に臨みましょう。良いレポートの条件その2:伝えたいメッセージが明確良いレポートは伝えたいメッセージが明確です。例えば以下のグラフを見てみましょう。このグラフにはどのような気づきがあるでしょうか?様々な気づきがあるのではないでしょうか?たとえば「2014年1月にサイトBの訪問者数がサイトAを逆転している」あるいは「2014年6月はどちらのサイトも訪問者数が伸びている」かもしれません。他にもいくつもの気付きがあります。しかし、このグラフを提示するだけでは、このように人によって解釈が変わってしまいます。そこで以下の注釈を加えてみました。いかがでしょうか?これにより見て欲しいポイントが明確になりました。「サイトAは前年同月では下がっているが、サイトBは上がっている」という事と「サイトAとサイトBのアクセスが高かった月の理由を知ってほしい」という二つになります。このように伝えたい事を明確にすることが、理解をそろえる上では重要になります。具体的には数値だけではなく、そこに吹き出しや文章などを追加して、数値に対して「意味付け(インサイト)」を与えることが重要になります。10個のグラフより、そこから得られる1つの気付きの方が大切です。良いレポートの条件その3:次のアクションが見えるレポートは作って終わりではありません。データから得られた事実や気付きに対して、どうすれば良いかを提示する必要があります。定点観測のレポートであれば、ある数値の変化は「施策を行ったので変化して当然」なのか「想定外の上昇や下降」だったのかによって打ち手の有無とその内容が変わってきます。改善提案のレポートであれば、具体的な改善施策の内容と、施策の優先順位やコスト・期待効果などがあればより実行に近づくかもしれません。次のアクションを与えるためには数値やグラフだけではなく、以下の3つの要素を考慮する必要があります。「気付き」その数値やグラフからどういった事実が分かったのか「要因」数値が変化した原因(内部要因・外部要因)「考察」その結果を受けてどう考えればよいのか。またアクションが必要なのか、もし必要な場合はどういったアクションが必要なのか全てのデータにこれらを追加する必要はありませんが、ゴールやKPIの数値、大きな変化があったデータに関しては上記3つの項目を追加することを意識しましょう。良いレポートの条件その4:読みやすい・見やすいレポートになっているちょっとした工夫や見直しによってレポートの見やすさは大きく変わってきます。レポートでよくある3つの分かりづらさは「誤字や脱字が多い」「文章が読みにくい(レイアウト・デザイン等)」「表やグラフが理解しにくい」です。筆者も必ずしも得意としている部分でありませんが、だからこそレポートを再度チェックすることや要点を抑えることで改善することが出来ます。読みにくい・見にくいレポートはそのせいで内容が頭に入ってこなくなるリスクを抱えています。逆に読みやすい・見やすいレポートは(良い意味で)気にならないあるいは褒められないというのがポイントです。今回の連載第4回目でわかりやすい表やグラフの作り方を中心に、上記の内容については事例と共にお伝えいたします。良いレポートの条件その5:定期的に作成され共有されている特に定点観測レポートに関して言えることですが、条件1~4を全て満たしたとしても、当初約束した内容と頻度で共有されていなければ利用されなくなってしまうでしょう。レポートのフォーマット作成は最初の1回目は時間がかかるかもしれませんが、一度作ってしまったら定期的に効率よく作成する必要があります。そのため良いレポートというのは、作成時間を減らすための工夫がされているレポートであるとも言えます。負荷が大きい場合は、一部データ取得をあきらめることを相談するといったことも必要です。今回は2種類のレポートと良いレポートの5つの条件を紹介いたしました。次回は具体的なレポートの作成手順や、レポート作成頻度別のレポート作成方法について紹介いたします。お楽しみに!