はじめてのリードナーチャリング。その意味と方法を徹底解説

リードナーチャリングとは?

弊社では、リードナーチャリングという言葉を、次のように定義している。

見込み客と継続的な接点を持ち、関係性を構築することで、購買意欲を醸成し、成約に繋がる可能性の高い顧客に育成するマーケティング活動。

リードナーチャリングというとメールマガジンをイメージされる方も少なくないかもしれないが、その概念がカバーする領域は広く、多くのBtoBに共通する課題である「集客後のプロセス」をオンライン、オフラインの様々な施策で解決するための手段だ。

なぜ、BtoB企業にリードナーチャリングが必要なのか?

では、なぜリードナーチャリングが重要なのだろうか?
リードナーチャリングが重要視されるようになったその背景には、BtoBにおけるさまざまな変化が関係している。

BtoBの変化1:購買プロセスの長期化

BtoBにおける変化のひとつは、購買プロセスの長期化だ。
BtoCとは違い、BtoBではすぐに購買に至るケースはそもそも稀であり、購買までに長い検討期間を経ることがほとんどである。

購入までに多くの段階を踏み、多くの人が関わるBtoBにおいて、商談や受注に至る新規顧客を獲得するためには、見込み客が自社の課題に気づき、製品やサービスの購買に向けて動き出すそのタイミングを捉えアプローチしなければならない。

従来はその役割を営業マンが継続的に訪問し見込み客との接点を持つことで担ってきた。しかし近年では、購買に至るまでの期間がさらに20%以上長期化しているというデータもあり、今まで以上にタイミングを捉えることが難しくなっている。

BtoBの変化2:情報収集手段の変化

それに加え、見込み客の情報収集手段も大きく変化している。

かつてBtoB企業の情報収集源は営業マンからがほとんどであったが、下記のデータからもわかるように、その中心はWebサイトへと移行している。購買の検討に必要な製品情報や専門知識は、営業マンに頼らなくともWebからある程度集めることができるようになっているのだ。

BtoBのバイヤーは何を見て、聞いて情報収集を行うのか?BtoB調査結果分析のレポートでは企業のWebサイトが51%と約半数を占める。

出典:仕事上の製品・サービスの情報源(2015年)

株式会社トライベック・ブランド戦略研究所

そうなると、困るのは営業マンである。従来は、定期的に企業に出向き、情報を提供することで見込み客の状況を把握し、予算感やタイミングに合わせて顧客を獲得してきたが、それが今までのようにはいかない。また、受注に近い見込み客を優先したい営業マンにとって、いつ起案化するか掴みきれない見込み客まですべてフォローすることは、時間的にも人員のリソース的にも実際のところ難しいだろう。

先述したように、BtoB企業が新規顧客を獲得するためには、見込み客が自社の課題に気づき、製品やサービスの購買に向けて動き出すそのタイミングを捉えることが重要だ。
現状、営業だけでは難しい見込み客との接点を、だれがどのように持つのか?
その役割を担うのがマーケティング部門であり、継続的に接点を持つ手段がリードナーチャリングだ。

マーケティング部門も、多くの課題を抱えている

しかし、リードナーチャリングに取り組むべきマーケティング部門も、現状多くの課題を抱えている。

マーケティング部門の課題1:見込み客管理がバラバラ

WEBサイトや展示会など、オンラインとオフラインを駆使して集めたリードデータ(見込み客の情報)。これらはExcelベースで管理されているケースが多く見られる。また、施策ごとに管理が分断されていることが多い。
手入力に頼ったExcel管理では、データをひとつにまとめたり (マージ)、不要なデータを削除したり(パージ)をその都度行うことが難しい。このため、せっかく展示会やWebなどの複数の接点をもつ見込み客がいても、リストの山に埋もれて把握できないなど、マーケティングに有効なデータを抽出しづらい状況になっている。

各施策毎のExcel管理でマージ、パージができていない。

マーケティング部門の課題2:見込み客の行動が見えない

Excel管理の結果、何が問題になっているかと言うと、見込み客それぞれの行動が把握できないことだ。長期に渡る購買プロセスの中で、見込み客はWebから情報を収集したり、展示会に足を運んだり、より関心の高いテーマについてはセミナーに参加して知見を深めたり、さまざまな行動を見せる。
購買プロセスの長期化・複雑化は、見込み客との接点も複数かつ多岐にわたっていくことを意味する。こうした複雑な行動をExcelで追いかけようとすると膨大な作業が必要となり、とても現実的ではない。

活動毎にリードが紐づいているため、見込み客毎の行動が見えない。特にオンライン側の行動はよくわかっていない。

マーケティング部門の課題3:接点を継続的に生み出せていない

例えば展示会は、一度に多くのリードデータを獲得できる集客施策であると同時に、見込み客との重要な接点でもある。しかし、せっかく展示会に足を運んでもらっても会期後の継続的な接点を用意できていないために、次の接点が1年後の同じ展示会まで空いてしまう、ということにもなりかねない。
これでは見込み客との関係をあたためることは難しいし、案件が発生するタイミングもつかめない。競合他社に水面下で商談を決められてしまうというリスクもある。BtoBマーケターにとって、継続的な接点を生み出す施策や体制を整えることが急務となっている。

イベントとイベントの間を取り持つコンタクトポイントが全くない。

マーケティング部門の課題4:適切な管理ツールを選べていない

営業マンの顧客管理と案件管理を円滑にするために、SFAと呼ばれる営業支援ツールを導入する企業が増えてきている。、マーケティング活動から獲得したリードデータもSFAで管理している企業も多いだろう。しかし、これはあくまで営業向きのツールであり、マーケティング部門が見込み客管理に使おうとしても、良い結果は得られにくい。そもそもマーケティング活動に必要な機能が付いていないために、見込み客の育成には適していないのだ。
また、営業とマーケティング部門が同じ管理ツールを使おうとすると、「その見込み客の管理責任がどちらにあるのか?」という重要なポイントが曖昧になり、結局見込み客を放置する事態にもなりかねない。

SFAにはとにかく獲得されたリードがインポートされている状態で、何からアプローチしてよいかわからない状態。

多くのBtoB企業のマーケティング部門が、何らかの課題を抱えている。このため、「リードナーチャリングを実施しようにも、何から始めればよいのか分からない」という悩みもよく耳にする。

リードナーチャリングは、どう始めればよいか?

様々な課題がある中、リードナーチャリングはどのように始めるのか?
ここからは、リードナーチャリングを実践するための具体的な手順を紹介していこう。

ステップ0:ターゲットとなる見込み客を定義する

これはリードナーチャリングだけではなく、あらゆるマーケティング活動において、共通して言えることである。そもそもマーケティングとは、自社の狙うべきターゲットを絞り込み、商談に繋げるための手段であり活動だ。
効果的にリードナーチャリングを実施するためには、どのような状態の見込み客がリードナーチャリングの対象者なのか、どのタイミングで営業部門に引き渡すのかを定義し、顧客化するまでの流れをファネル(漏斗)のように絞り込んでいく形で設計することが必要である。

責任の所在を見極めるために理解しておきたいのが、「MQL(マーケティング・クオリファイド・リード)」と「SQL(セールス・クオリファイド・リード)」という考え方だ。

●MQL マーケティング・クオリファイド・リード

見込み客を顧客化していくためには、さまざまなステップを経る必要がある。営業マンが一から育てていては、あまりに効率が悪いということは、もうお分かりだと思う。そこで、マーケティング側が商談に繋がりそうなレベルまで育て、営業担当に受け渡すまでの見込み客が、マーケティング・クオリファイド・リードだ。つまり、マーケティングが育てる見込み客のことである。

●SQL セールス・クオリファイド・リード

マーケティング・クオリファイド・リードが営業担当に受け渡され、ようやく営業マンたちの出番がやってくる。見込み客の管理責任がマーケティング側から営業側へと移行し、営業担当者が責任を持って実際にアプローチをする段階に入る。これが、セールス・クオリファイド・リードだ。もし、ここで失注をした場合は再びMQLへと見込み客を戻す必要がある。

ステップ1:リード(見込み客)情報を統合する

まず、手をつけるべきなのは煩雑になっている見込み客情報の整理だ。重複している見込み客の情報をまとめたり、不必要な情報を削除したり、企業や役職などの属性情報をどのような項目のもとで管理するのかをルール化する。こうして整えたデータベースは、すべてのマーケティング活動の土台となる。

ステップ2.関係性を向上させる

見込み客情報を統合したら、次にすべきは、どのように見込み客との接点を創り出すかだ。
そこで効果的なのが、「コンテンツ」だ。見込み客との接点となるコンテンツを継続的に配信することで、見込み客の関心を高めたり、信頼感を醸造したりしながら、案件の受注確度を高めていくことができる。
コンテンツにはさまざまなタイプがあり、それを見込み客に届ける方法も様々だ。下の表に例として挙げているコンテンツのタイプと配信方法は、どれが最も高い効果を発揮するかを断定することはできない。見込み客の業種や業界、ターゲット層によっても変動するだろう。大切なのは、あらゆる方法を検証しながら、相手を飽きさせないように継続的に接点を生み出すことだ。

さらに、組み立て方にも大きく2つのパターンがあることをお伝えしておきたい。

●エンゲージ(高める)

見込み客全体に対して中長期的に接点を持ち、関係性を醸成するためのアプローチ。定期的なメール配信をはじめ、長く続けることで効果が生まれる手法だ。

●ドリップ(絞る)

見込み客をふるいにかけ、期待度の高い相手だけに絞り込んで、アプローチをかけるもの。キャンペーンなど一定の期間を決めて、短期で成果を狙う場合に向いている手法だ。

この2つの接点を組み合わせてリードナーチャリングの流れを設計していく。例えば、一年を通してエンゲージ型のアプローチを実施しながら、ある基準を満たした見込み客に対しドリップ型のアプローチを仕掛けて絞り込むなど、いろいろな可能性が考えられる。

ステップ3:見込み客の行動を管理する

コンテンツを作成し、届ける準備もできた。そうなれば次は、見込み客の行動を把握し、購買のタイミングをしっかりと見極める段階だ。しかし、製品を購買するまでの流れは、企業によってさまざま。また、オンライン・オフラインをまたいで接点がより複雑になっているため、見込み客ごとの行動管理が難しくなっている。

前述したように、これまでのような施策ごとのExcel管理では、複雑化・長期化する見込み客の行動を追い切れない。そこで今注目されているのが、見込み客との接点管理を自動化し、その行動を見える化できるツール「MA(マーケティングオートメーション)」だ。

※参考:『マーケティングオートメーションの役割と機能を分かりやすく解説

営業マンがSQLを管理するためにSFAがあるように、マーケティングオートメーションとは、マーケティング側が管理する見込み客(MQL)を管理するためのツールのこと。弊社でもMAツールの導入支援を行っているが、マーケティングオートメーションを活用することで、従来では知ることが困難であった見込み客の行動や多くの情報が見えてくる。

ステップ4:スコアリングで確度を見極める

見込み客の行動を管理し、把握すると同時に、案件発生のタイミングを見極めて営業に繋ぐ必要がある。その指標として重要な役目を果たすのがスコアリングだ。
例えばブログを一回読んだら10ポイント、WEBで製品ページを閲覧したら30ポイント、セミナーに参加したら50ポイントというように、各接点に対してスコアを設定。マーケティングオートメーションツールを活用すれば、スコアがしきい値を超えた場合、自動でアラートしたり、スムーズに営業に引き継ぐことが可能だ。
また、スコアリングは開始から時間が経つほど貯まっていくため、一定期間反応が無い見込み客は減算するなど、スコアの鮮度と信頼性を高めるためのチューニングも欠かせない。

※参考:『リードスコアリングで見込み客の有効度を見極め商談率アップをはかる方法

すべてのマーケティング活動の土台となるデータベースをつくり、コンテンツで継続的な接点を生み出し、MAツールによって見込み客の行動を可視化したり、スコアリングで確度の高い見込み客を自動抽出する。
BtoBマーケティングを取りまくIT環境が整ったことにより、効果的にリードナーチャリングを実践できる時代がやってきた。このチャンスを活かさない手はないだろう。

まとめ

今回は、リードナーチャリングについての基本的な知識を中心に、その必要性が生まれた背景や、実際に取り組むためのステップをご紹介した。これまで、多くのBtoB企業がリソースの不足や有効なツールを持たないがために、将来有望な顧客となり得る見込み客を活かすことができずにいた。
BtoB企業の場合、一度取引が始まると長期的な関係に発展していくことも多い。一人の見込み客が大きな価値を持っているのだ。リードナーチャリングを正しく実践し、企業にとって重要な資産である見込み客を、最大限に活かしていただきたい。

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